「いびきがひどい」
「日中の眠気が取れない」
「朝起きると頭が痛い」
このような症状でお悩みではありませんか?
もしかすると、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。実は、この病気の原因は肥満だけではありません。
痩せ型の方や女性、子どもでも発症することがあり、その原因は実に多様です[1]。
今回は、睡眠時無呼吸症候群の9つの主要な原因について、最新の医学的知見をもとに詳しく解説します。
あなたの症状の原因を知ることで、適切な治療への第一歩を踏み出しましょう。
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あなたはどのタイプ?考えられる原因セルフチェックリスト
まずは、以下のチェックリストで、あなたに当てはまる項目を確認してください。
□ 最近、体重が増えた(BMIが25以上)
□ 顎が小さい、または後退している
□ 首が短い、または首回りが太い
□ 日常的にいびきをかく
□ 寝る前にお酒を飲む習慣がある
□ 喫煙している
□ アレルギー性鼻炎などで鼻がよく詰まる
□ 仰向けで寝ることが多い
チェックが多かった項目が、あなたの主な原因かもしれません。詳しく見ていきましょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の二大原因
原因①:気道の閉塞(肥満・脂肪沈着)
肥満は睡眠時無呼吸症候群の最も重要な危険因子の一つです[2]。
体重が増加すると、首周りや舌、咽頭(のど)の周囲に脂肪が蓄積し、気道が狭くなります。
特に、首周りの脂肪沈着は直接的に上気道を圧迫します。男性で首回り40cm以上、女性で35cm以上の方は要注意です[3]。
また、舌の肥大(舌への脂肪沈着)も気道閉塞の重要な原因となります。
BMIが高いほどOSAのリスクは上昇し、体重を10%減少させると、無呼吸・低呼吸指数(AHI)が約26%改善するという報告もあります[4]。
原因②:顎や首の骨格的な特徴
骨格的な特徴も睡眠時無呼吸症候群の重要な原因です。
特に東アジア人(日本人を含む)は、欧米人と比較して以下のような特徴があることが分かっています[5]。
- 下顎が小さく後退している(下顎後退症)
- 上顎が狭い
- 顔面が前後に短い(短頭型)
これらの骨格的特徴により、舌が後方に下がりやすく、気道が狭くなりやすいのです。
実際、同じBMIでも、アジア人は欧米人より重症のOSAを発症しやすいことが報告されています[6]。
生活習慣や体質に潜む7つの原因
加齢による喉の筋力低下
加齢により、上気道を開いた状態に保つ筋肉(咽頭拡張筋)の筋力が低下します。
特に60歳以降でOSAの有病率が上昇することが知られています[7]。筋力低下により、睡眠中に気道が虚脱しやすくなるのです。
飲酒・喫煙
飲酒は、上気道の筋肉を弛緩させ、呼吸中枢の感受性を低下させることで、OSAを悪化させます[8]。
アルコール摂取により、無呼吸の持続時間が長くなり、低酸素血症が重症化することが報告されています[9]。
喫煙は、上気道の炎症を引き起こし、粘膜の浮腫(むくみ)を生じさせることで気道を狭くします[10]。
喫煙者は非喫煙者と比較して、OSAのリスクが約2.5倍高いという報告があります[11]。
睡眠薬の服用
ベンゾジアゼピン系睡眠薬などの中枢神経抑制薬は、上気道筋の緊張を低下させ、呼吸中枢の反応性を鈍らせることで、OSAを悪化させる可能性があります[12]。
仰向け寝の習慣
仰向けで寝ると、重力により舌根部が後方に落ち込み、気道が狭くなります。
体位依存性OSAと呼ばれ、仰向けでのAHIが側臥位の2倍以上になる患者さんも少なくありません[13]。
アレルギー性鼻炎や鼻中隔弯曲症
鼻閉(鼻づまり)があると、口呼吸になりやすく、OSAのリスクが上昇します。
アレルギー性鼻炎患者では、OSAの有病率が一般人口の約1.8倍高いことが報告されています[14]。
鼻閉により
- 口呼吸となり、下顎が後退する
- 上気道の陰圧が増大し、虚脱しやすくなる
- 睡眠の質が低下し、覚醒反応が増える
扁桃腺(へんとうせん)・アデノイドの肥大
扁桃腺やアデノイドの肥大は、物理的に気道を狭窄させます。
特に小児では最も重要な原因であり、小児OSA患者の約70-80%に認められます[15]。
成人でも扁桃肥大がある場合は、OSAのリスクが上昇します。
口呼吸の習慣
慢性的な口呼吸は、以下のメカニズムでOSAを悪化させます[16]。
- 下顎が後退し、舌根部が気道を圧迫
- 口腔・咽頭の乾燥により、粘膜の炎症・浮腫が生じる
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見逃さないで!女性・子ども特有の原因
女性に特有の原因:ホルモンバランスの変化
女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)は、上気道の筋緊張を維持し、呼吸中枢の感受性を高める作用があります[17]。
閉経後には、これらのホルモンが急激に減少するため、OSAのリスクが上昇します。
実際に、閉経後女性のOSA有病率は閉経前の約2.6倍に上昇することが報告されています[18]。
また、閉経後は内臓脂肪が蓄積しやすくなることも、OSAリスクを高める要因となります[19]。
妊娠中も、体重増加、鼻粘膜の浮腫、横隔膜の挙上などによりOSAのリスクが上昇します。
お子さんに特有の原因:扁桃・アデノイド肥大
小児OSAの最大の原因は、扁桃・アデノイド肥大です[20]。
小児の特徴
- 2-8歳に好発(扁桃・アデノイドが最も大きくなる時期)
- 肥満がなくてもOSAを発症しやすい
- 成長・発達への影響が大きい(成長ホルモン分泌低下、学習能力低下など)
扁桃肥大度3度以上(扁桃が正中まで達する)の小児では、約60-80%にOSAが認められます[21]。
【専門的な解説】実は2種類ある睡眠時無呼吸症候群のタイプ(OSAとCSA)
患者の9割以上「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、上気道の物理的な閉塞により生じます。
呼吸努力は続いているものの、気道が塞がれているため、空気が肺に入らない状態です[22]。
OSAの特徴
- いびきを伴うことが多い
- 呼吸努力による胸腹部の動きは継続
- 肥満、骨格異常、扁桃肥大などが主な原因
脳の指令が原因「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)は、脳からの呼吸指令が一時的に停止することで生じます。呼吸努力自体が消失するのが特徴です[23]。
CSAの主な原因
- 心不全:最も多い原因。心不全患者の30-50%にCSAが認められる[24]
- 脳血管障害(脳梗塞、脳出血)
- オピオイド系薬剤の使用
- 高地滞在
CSAでは、チェーン・ストークス呼吸と呼ばれる、呼吸が徐々に大きくなったり小さくなったりを繰り返すパターンが特徴的です。
原因がわかったら、次は解決へ
本当の原因を特定するには、専門医の診察と検査が不可欠
睡眠時無呼吸症候群の正確な診断には、以下の検査が必要です。
- 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG):睡眠中の呼吸、脳波、筋電図などを総合的に評価
- 簡易睡眠検査:自宅で行える検査。重症度の評価が可能
- 画像検査(CT、MRI):骨格異常や軟部組織の評価
- 内視鏡検査:上気道の狭窄部位の特定
オンライン診療で、あなたの原因に合わせた解決策をご提案
森下駅前クリニックでは、睡眠時無呼吸症候群の診断から治療まで、包括的な医療を提供しています。
当院の特徴
- 呼吸器内科専門医による診察
- 最新の検査機器による正確な診断
- 一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療(外科治療、歯科装具治療などについては当該科に治療依頼提供)
- オンライン診療による継続的なCPAP治療フォローアップ
睡眠時無呼吸症候群は、単に「太っているから」「いびきがうるさいだけ」という病気ではありません。
肥満、骨格的特徴、加齢、生活習慣、ホルモンバランスなど、様々な要因が複雑に絡み合って発症します。
放置すると、高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などの重大な合併症のリスクが高まります[25]。
また、日中の眠気による交通事故のリスクも無視できません。
あなたの症状の原因を正確に特定し、適切な治療を受けることで、質の高い睡眠と健康的な生活を取り戻すことができます。
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合はオンライン診療へ
「いびきがひどい」「日中の強い眠気がある」「朝の頭痛が続く」など、睡眠時無呼吸症候群が疑われる症状でお悩みの方は、ぜひ森下駅前クリニックのオンライン診療をご利用ください。
ご自宅にいながら、専門医の診察を受けることができ、必要に応じて簡易睡眠検査キットをお送りすることも可能です(簡易検査結果によってはPSG検査も可能です)。
検査結果をもとに、あなたに最適な治療法をご提案いたします。健康的な睡眠は、充実した日々の生活の基盤です。
一人で悩まず、まずは専門医にご相談ください。
オンライン診療のご予約はこちらお問い合わせ・ご相談もお気軽にどうぞ。
あなたの健やかな眠りを、私たちがサポートいたします。
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睡眠時無呼吸症候群をもっと詳しく
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合併症
症状
原因
傾向
疑い
引用文献
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