睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に広く用いられるCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)ですが、使用者の多くが「鼻づまり」に悩まされています。

CPAP装置から送られる空気により鼻が乾燥したり刺激を受けたりすることで、鼻粘膜が炎症を起こして鼻づまり(鼻閉)や鼻水が生じる場合があります[1][2]

実際、CPAP利用者の30~50%に何らかの鼻の症状(鼻づまり、鼻水、乾燥感など)が見られ、その症状が原因でCPAP治療を中断してしまうケースも少なくありません[3]

本記事では、CPAP使用時に鼻づまりが起こる原因とその放置によるリスク、さらに鼻づまりへの具体的な対策について、エビデンスに基づき解説します。

また、鼻づまりによる口呼吸の問題点や、改善しない場合の他の治療法、オンライン診療の活用についても紹介します。

CPAP治療中の鼻づまりにお困りの方は、ぜひ参考にしてください。

 

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CPAP使用時に鼻づまりが起こる原因

 

CPAP使用中に鼻づまりが生じる主な原因として、以下のような要因が考えられます。

送気による鼻の乾燥

CPAPマスクから常に送り込まれる空気によって、鼻の粘膜が乾燥しやすくなります。

鼻粘膜が乾燥すると、本来の加湿・加温機能が低下し、防御反応として粘膜が腫れて鼻づまりを起こすことがあります。

医学研究でも、CPAPの送気で鼻粘膜の水分が奪われると炎症が生じ、鼻づまりや鼻水などの症状を引き起こす一因になることが報告されています[1][2]

特に加湿器を使用していない場合、冷たく乾いた空気が直接鼻腔に当たるため、粘膜の乾燥と刺激が強まりがちです。

乾燥による不快感から、CPAP使用中にくしゃみや鼻水が出る人もいます。

空気の圧力による粘膜の刺激

CPAPは気道を空気圧で広げる装置ですが、その陽圧は鼻の内部にもかかっています。

高い圧力の空気が持続的に流入することで、鼻粘膜に物理的な刺激が加わり、充血やむくみを引き起こす可能性があります。

CPAP治療開始直後に一時的に鼻づまりを感じる患者さんもおり、これは鼻が過敏に反応して粘膜が腫れているためと考えられます。

実際、短時間のCPAP使用でも鼻粘膜の炎症性物質が増加しうるとの報告もあり[4][5]、空気圧そのものが鼻の組織にストレスを与えることが示唆されています。

ただし、こうした反応は個人差が大きく、徐々に鼻が慣れて症状が軽減するケースもあります。

アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎など持病の影響

元々アレルギー性鼻炎慢性副鼻腔炎など鼻の持病がある場合、CPAP使用で鼻づまりが悪化しやすくなります。

アレルギー性鼻炎の患者さんは粘膜が敏感なため、CPAPからの空気(湿度や温度の変化、圧力)が非アレルゲン性の刺激となって鼻づまりを誘発することがあります[6][7]

実際の研究でも、CPAP使用によって主観的な鼻づまり症状は平均的に改善する傾向があるものの、アレルギー性鼻炎を持つ人では改善が少なく、むしろ悪化する場合があることが示されています[8][9]

このように、アレルギー体質の方はCPAPの影響を受けやすく、持病の治療が不十分だと鼻づまりが生じやすいのです。

また、慢性副鼻腔炎や鼻中隔弯曲、鼻ポリープなど鼻通りを妨げる疾患がある場合も、CPAPの空気が十分に通らず鼻閉感を感じることがあります。

マスクの装着不良やサイズの問題

CPAPマスクのフィットが悪い場合も、鼻づまりの原因となり得ます。

マスクが鼻に合っていないと空気漏れが生じ、必要な圧力が十分鼻腔内に伝わらなくなります。

その結果、空気流のムラが鼻粘膜を刺激したり、口から空気が漏れて鼻が十分に換気されず詰まった感じがすることがあります。

特に鼻孔に差し込む「鼻ピロー型」のマスクでは、サイズが合わないと鼻の入り口が圧迫されて通気が悪くなる場合があります。

また、マスクをきつく締めすぎると鼻周囲の血行が悪くなり、粘膜がうっ血して鼻づまりを感じることもあります。

このように、マスク選びや装着の仕方次第で鼻への負担が変わるため、適切なサイズ・密閉度のマスクを使用することが重要です。

鼻づまりを放置するとどうなる?

 

CPAP使用中の鼻づまりを「仕方ない」と放置すると、CPAP治療の効果が十分に得られなくなる恐れがあります。

具体的には次のような悪影響が考えられます。

CPAPを外してしまい治療効果が下がる

鼻が詰まったままでは息苦しく感じてしまい、夜中に思わずCPAPマスクを外してしまう患者さんも少なくありません。

鼻づまりによる不快感でCPAPを継続できないと、一晩のうちでCPAP未装着の時間が増えてしまいます。

その結果、睡眠中の無呼吸・低呼吸(止まった呼吸)が防げなくなり、CPAP治療本来の効果が発揮されません。

ある研究では、鼻症状のある患者はCPAPの使用時間が短くなる傾向が示されており、特に鼻水(鼻漏)が多い人で顕著にCPAP継続時間が減少しました[10][11]

鼻づまりはCPAP治療の大敵であり、放置すると「せっかく始めたCPAPを続けられない」という事態にもなりかねません[12][13]

熟睡できず眠気・疲労が残る

鼻づまりでCPAPの気道確保が不十分になると、睡眠中に再び無呼吸や低呼吸が起こり、脳が何度も覚醒しかけて睡眠が中断されます。

その結果、熟睡感が得られず、朝起きたときに疲労感や日中の強い眠気が残ってしまいます。

CPAPを使用しているのに効果が実感できない場合、鼻づまりによる治療不十分が原因の一つとして疑われます。

また、鼻づまりで口呼吸になると喉の乾燥やいびきの再発も起こりやすく、睡眠の質が低下します。

十分睡眠がとれない状態が続くと、日中の注意力低下や作業能率の低下につながり、生活の質(QOL)も悪影響を受けます。

CPAP本来の目的である「質の高い睡眠による日中症状の改善」が得られなくなるため、鼻づまりは軽視できません。

無呼吸症候群のリスク(高血圧・心疾患)が再び高まる

SAS(睡眠時無呼吸症候群)を治療せずに放置すると、高血圧や心疾患、脳卒中、糖尿病など様々な合併症リスクが高まることが知られています。

そのためCPAP治療で無呼吸状態をしっかり是正することが大切ですが、鼻づまりによってCPAPの治療効果が低下すると、これら合併症リスクが再上昇してしまう可能性があります。

実際、重症のSAS患者では、CPAP非使用の場合に心血管イベントの発生率が有意に高かったとの報告があります[14][15]

CPAP使用中でも、鼻づまりで十分な時間・圧力の使用ができないと、治療しないのと同じ状態に近づいてしまう懸念があります。

特に就寝後の前半に鼻づまりでマスクを外す習慣がつくと、一晩のうち長時間CPAP無しで過ごすことになり、睡眠中の低酸素状態や血圧上昇が繰り返されます。

その結果、高血圧のコントロール不良や心臓への負担増大につながりかねません。

健康維持のためにも、鼻づまりを放置してCPAP効果が損なわれる事態は避けるべきです。

 

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鼻づまりによる口呼吸に注意

 

鼻が詰まっていると、人は無意識のうちに口で呼吸するようになります。

CPAP使用中に鼻づまりがあると、この口呼吸が治療効果や快適性の面で新たな問題を引き起こします。

以下では、鼻づまり時の口呼吸のデメリットと対策について解説します。

鼻づまりがあると口呼吸になりやすい

本来、人は鼻で呼吸することで空気を加湿・加温し、ホコリなどをろ過しています。

しかし、鼻づまりで鼻から十分な空気を取り込めないと、反射的に口が開いて空気を吸う口呼吸になってしまいます。

特に睡眠中は意識的に鼻呼吸へ戻すことが難しく、鼻づまりがあるとそのまま朝まで口呼吸になるケースが多いです。

CPAP治療でも、鼻マスクや鼻ピロー型マスクを使用している場合、鼻が詰まると自然に口が開いてしまい、送られた空気が鼻からではなく口から漏れてしまいます。

このように鼻づまり→口呼吸への移行はごく自然な体の反応ですが、CPAP療法中には対策が必要です。

口呼吸によるデメリット(のどの乾燥・いびき悪化・治療効果低下)

口呼吸になると、まずのどの乾燥が顕著になります。

CPAPの空気が鼻ではなく口へ流れると、加湿されないまま気道に入り口腔や咽頭を乾かしてしまいます。

その結果、朝起きたときに喉がカラカラに渇いたり痛みを感じたりします。

また、口呼吸は舌根が喉の奥に落ち込みやすく、いびきの悪化につながることがあります。

せっかくCPAPで気道を確保しても、口からの空気漏れで十分な陽圧が保てないと、いびきや無呼吸が再発してしまうのです[12][13]

さらに、口呼吸による空気漏れはCPAP治療の効果を著しく低下させます。空気が漏れることで気道内圧が下がり、無呼吸の予防が不十分になります。

そのため、口呼吸が習慣化するとCPAPを装着していても実質的に治療できていない状態になりかねません。

実際、睡眠中に口呼吸の多い患者はCPAPの継続利用率が低下するとの研究報告もあります[16][17]

このように、鼻づまりによる口呼吸はCPAP治療の障害となるため、対策が必要です。

防ぐ方法(フルフェイスマスク・チンストラップなど)

鼻づまり時の口呼吸対策として、いくつかの方法があります。

まず有効なのはフルフェイスマスクへの変更です。

フルフェイスマスク(鼻口両用マスク)なら鼻と口の両方を覆うため、鼻が詰まって口呼吸になっても空気が漏れず、CPAPの圧力が維持されます。

特に慢性的に鼻づまりがある方や、アレルギーの時期だけ鼻が詰まりやすい方には、CPAPフルフェイスマスクの使用が推奨されます。

一方、現在の鼻マスクを続けたい場合はチンストラップ(顎ベルト)の併用が有効です。

チンストラップは顎が開かないよう支えるバンドで、睡眠中に口がポカンと開くのを防ぎます。

これにより強制的に鼻呼吸が促され、空気漏れを減らすことができます[18]

その他、マウスピースタイプの簡易な口閉じテープを利用する人もいますが、鼻づまりが強いときのテープ使用は危険です。

鼻で全く息ができないのに口も塞いでしまうと窒息のリスクがあるため、口閉じテープを使う際は鼻呼吸が確保できている場合に限りましょう(テープ使用は医師と相談の上で)。

このような補助グッズを活用し、できる限りCPAP中も鼻呼吸を維持できるよう工夫することが大切です。

CPAPによる鼻づまりの対策方法

 

では、実際にCPAP鼻づまり対策としてどのような方法があるか、具体的に見ていきましょう。

以下の対策を組み合わせることで、多くの場合鼻づまり症状の改善が期待できます。

加湿機能を使う/加湿器を併用する

CPAP装置に内蔵された加湿機能を積極的に利用しましょう。

加湿器一体型のCPAPであれば、水タンクに清潔な水を入れて適切な湿度設定にします。

加湿によって送気が潤うと、鼻粘膜の乾燥が防げるため鼻づまりや鼻の不快感が軽減します[19][2]

実際、ランダム化試験でも加温加湿器を使用した場合に鼻づまり症状が減少し、鼻の抵抗値や炎症マーカーが改善したことが報告されています[19][2]

さらに、加湿ありCPAPでは使用時間(コンプライアンス)が有意に延びたとのデータもあります[20][21]

もしお使いのCPAPに加湿機能が無い場合でも、寝室に別置きの加湿器を設置して室内の湿度を50~60%程度に保つと良いでしょう。

冬場の乾燥する時期は特に念入りな加湿が重要です。適切な加湿は鼻の乾燥と炎症を防ぎ、CPAP治療の快適性と効果を向上させてくれます[22][23]

鼻腔スプレー(生理食塩水など)の活用

市販の生理食塩水スプレー(生理食塩水=0.9%食塩水)を使用することで、鼻の通りを良くする手助けができます。

就寝前に生理食塩水スプレーで鼻腔内を洗浄・潤滑すると、粘膜表面の乾燥やほこりを除去でき、CPAP装着中の鼻づまり予防に有効です。

塩分濃度が体液に近いため刺激が少なく、毎晩使っても安全です。

また、アレルギー性鼻炎がある方や鼻粘膜の炎症が強い方には、医師の処方でステロイド点鼻薬を併用する方法もあります。

ステロイド点鼻薬(フルチカゾンなど)は鼻粘膜の炎症や腫れを抑える効果が高く、継続使用で鼻づまりが改善すればCPAPの継続利用もしやすくなります。

実際、OSA患者を対象とした無作為比較試験では、ステロイド点鼻薬を併用した群でCPAPの平均使用時間が有意に延長し、90日後の鼻づまりや鼻水症状も顕著に減少しました[24][25]

このように薬剤の力を借りることで、CPAPによる鼻づまりをコントロールできる場合があります。

ただし、点鼻薬は即効性がないものも多いため、医師の指示通り継続して使用することが大切です。

また、一時的に市販の鼻づまり解消スプレー(血管収縮薬入り)を使う手もありますが、長期連用はかえって症状を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。

基本は生理食塩水やステロイド噴霧など、習慣性のない安全なものを選びましょう。

マスクの種類やサイズを変更する

前述のように、マスクのフィット不良が鼻づまりに関与する場合は、思い切ってマスクの種類・サイズを見直すことも検討してください。

例えば鼻だけを覆うタイプで鼻孔部に違和感がある場合は、鼻全体を覆うクッションタイプのマスクに変更すると圧迫感が減り鼻腔が確保されることがあります。

逆に、鼻孔に差し込む鼻ピロー型でフィットするサイズが見つかれば、鼻内部への送気がスムーズになるケースもあります。

重要なのは自分の鼻の形や大きさに合ったマスクを選ぶことです。

また、慢性的な鼻づまりがある方は先述のフルフェイスマスク(口と鼻を両方覆うタイプ)への変更も選択肢です。

フルフェイスなら口呼吸でも治療効果が維持できるため、鼻の通りに左右されにくくなります。

実際の臨床でも、鼻づまりで鼻マスクが使いにくい患者さんがフルフェイスに変えて快適に継続できたという例は多く報告されています(※フルフェイスは圧が逃げにくいぶん、目元に空気が漏れると眼の乾燥につながるため、きちんと密着させましょう)。

加えて、マスク装着時のストラップ調整も見直してください。

きつすぎず緩すぎず、寝返りを打ってもずれにくい適切な強さで装着することがポイントです。

適合するマスクに変更するだけで鼻づまりが改善する例もあるため、遠慮せず担当医や業者に相談しましょう。

圧設定を医師に調整してもらう

CPAPの送気圧そのものが高すぎて鼻に負担となっている場合、圧力設定の見直しが有効なことがあります。

特にCPAP開始直後で最適圧がまだ定まっていない場合は、主治医に相談して一時的に圧力を下げてもらう、もしくはオートCPAP(自動調節式)のモードに変更してもらうといった対応が考えられます。

オートCPAPであれば必要最低限の圧力で運転されるため、鼻への過度な刺激が緩和される可能性があります。

また、呼気圧低減(EPR機能付きなら呼気時の抵抗感が減り、鼻への逆圧ストレスが軽減します。

こうした機能を適切に使うことで、鼻粘膜の刺激を抑えつつ無呼吸を予防できます。

ただし、自己判断で圧力を変えるのは避けてください。圧が低すぎると無呼吸が十分防げず危険です。

必ず医師の指示のもと、鼻症状と無呼吸のバランスを考慮した最適な圧設定を模索しましょう。

定期的な睡眠検査やCPAPデータの解析を通じて、治療効果を維持しつつ鼻づまりが最小になる圧力を調整してもらうことが理想です。

寝室環境(湿度・温度)の改善

意外に見落とされがちですが、睡眠時の部屋の環境も鼻づまりに影響を与えます。

空気が乾燥した部屋や、ほこり・花粉が多い環境では鼻粘膜が刺激されやすく、CPAPをつけていても鼻づまりが生じやすくなります。

そこで、就寝前に寝室の湿度をチェックし、必要に応じて加湿器で調整しましょう。湿度50%前後を保つと鼻粘膜が安定しやすいと言われます。

また、室温も適切に保つことが重要です。

冬場に部屋が寒すぎると空気が乾燥し鼻に刺激となるため、適度な暖房で18~22℃程度の快適な温度を維持してください。

さらに、寝室の清掃や寝具の洗濯も鼻づまり対策になります。

ダニやハウスダスト、花粉などのアレルゲンが蓄積しないよう、こまめに掃除機をかけ、シーツや枕カバーを清潔に保ちましょう。

空気清浄機の利用も効果的です。

こうした環境整備により、CPAP装着時の鼻粘膜への刺激を減らし、鼻通りを良好に維持できる可能性があります。

薬や機械以外の基本的な対策ですが、積み重ねることで鼻づまり軽減に寄与します。

 

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鼻づまりが改善しないときはどうする?

 

上記の対策を講じてもなおCPAP使用時の鼻づまりが強く、「どうしてもつらい」という場合は、以下のさらなる対応策を検討します。

耳鼻咽喉科での診察(鼻炎・副鼻腔炎の治療)

まずは専門医である耳鼻咽喉科を受診し、鼻の状態を詳しく調べてもらいましょう。

アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎が隠れていないか、鼻中隔の弯曲やポリープなど物理的な閉塞がないかをチェックすることが重要です。

もし何らかの鼻疾患が見つかれば、その治療を行うことでCPAP使用時の鼻づまりも改善する可能性があります。

たとえばアレルギー性鼻炎であれば、抗ヒスタミン薬の内服やステロイド点鼻による積極的なアレルギー治療が必要です。

また慢性副鼻腔炎の場合、抗生剤の投与や副鼻腔洗浄、場合によっては内視鏡下副鼻腔手術で鼻通りを改善する選択肢もあります。

鼻中隔弯曲が強い場合は鼻中隔矯正術で空気の通り道を広げられますし、下鼻甲介(鼻の粘膜ヒダ)の肥大があれば粘膜を縮小する処置(焼灼術など)も検討されます。

特にレーザー治療は下鼻甲介肥大の改善に用いられることがあり、鼻づまり軽減に有効です(レーザーによる粘膜焼灼で腫れた組織を小さくします)。

ある研究では、鼻閉の外科的治療(鼻中隔や下甲介の手術)を行ったSAS患者全員でCPAPの使用耐容度とコンプライアンスが向上したと報告されています[26][27]

このように、根本的な鼻の問題を治すことで、CPAP治療を快適に継続できるようになるケースも多いのです。

鼻づまりに悩んだら遠慮なく耳鼻科医に相談しましょう。

CPAP以外の治療(マウスピース・手術)も選択肢

どうしてもCPAPがうまくいかない場合、CPAP以外の治療法に目を向けることも必要です。

中等症までのSASであれば、歯科装具を用いたマウスピース治療(口腔内装置療法)が有効な場合があります。

マウスピース(下顎前方移動装置)は就寝時に下あごを前方に固定することで喉の気道を拡げ、無呼吸の頻度を減らします。

CPAPほど無呼吸を完全には抑制できないこともありますが、患者さんの使用継続率が高いとの報告もあり[28][29]、CPAPが耐えられない方には現実的な代替手段となります。

実際、専門学会のガイドラインでも「CPAPに不耐容な成人患者には口腔内装置を処方することを検討せよ」と勧告されています[30][31]

一方、重症SASや解剖学的異常がある場合は外科手術も選択肢です。

代表的なものに、軟口蓋や扁桃を切除・縮小して上気道を拡げる手術(いびき・無呼吸手術)があり、これにより無呼吸の改善が期待できます。

また、肥満によるSASには減量手術(胃縮小術など)が効果を示す場合もあります。

最近では舌下神経刺激装置(Inspire療法)といった新しい治療も登場しています。

重要なのは、CPAP以外にも治療法が存在するということです。

それぞれメリット・デメリットがありますが、医師と相談しながら自分に合った治療を選ぶことができます。

ただし、口腔内装置や手術は適応に条件があるため、全員に有効とは限らない点は念頭に置いてください。

自己判断で治療を中止せず必ず医師に相談

鼻づまりがつらいからといって、自己判断でCPAP治療を中断してしまうのは絶対に避けましょう。

前述の通り、未治療のSASは放置すると様々な健康リスクを高めます。

CPAPを勝手にやめて無呼吸を放置すれば、また日中の眠気や高血圧・心疾患リスクがぶり返してしまいます。

どうしてもCPAPが辛い場合は、勝手に止めるのではなく必ず担当医に相談してください。

医師はこれまで述べたような対策(加湿設定の変更、点鼻薬処方、マスク変更、圧力調整など)を総合的に検討し、可能な限りCPAPを継続できる方策を一緒に探ってくれます。

それでも難しければ他の治療への切り替えも含めて提案してくれるでしょう。

実際、医療機関の規模によっては看護師や臨床工学技士によるCPAPフォローアップ外来を設け、使用上の悩み相談に応じているところもあります。

一人で抱え込まず、医療者のサポートを仰ぎましょう。

大事なのは治療をやめないことです。

SASは完治が難しい慢性疾患ですが、治療を続ければリスクをコントロールできます。

鼻づまりは決して理由になりませんので、「合わないからもういいや」と諦めず、改善策を模索してください。

 

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合はオンライン診療へ

最後に、まだ診断は受けていないものの「自分も睡眠時無呼吸症候群かもしれない」と感じている方へのアドバイスです。

SASが疑われる場合は、早めに医療機関で検査・診断を受けることが重要です。

いびきが大きい、睡眠中の無呼吸を指摘された、日中の強い眠気がある、高血圧や肥満を指摘されている――このような方はSASの可能性があります。

SASは非常にありふれた病気で、成人の数%~十数%に及ぶとも言われますが、その8090%は未診断のまま放置されているとの推計もあります[32][33]

未治療のSASは放っておいても自然に治ることは少なく、上述したような重大な合併症につながるリスクもあります。

しかし「忙しくて病院に行けない」「睡眠検査に抵抗がある」という方も多いでしょう。そこで活用したいのがオンライン診療です。

現在では、初診からオンラインで相談に乗ってくれる睡眠専門医療機関も増えてきています。

オンライン診療であれば、自宅にいながらビデオ通話等で医師の問診を受けられ、必要な検査機器(自宅でできる簡易睡眠検査キットなど)を郵送してもらうことも可能です。

結果に応じて適切な治療(CPAPやマウスピース治療など)を提案してもらえます。

特にコロナ禍以降、遠隔でのSASスクリーニングや治療開始が柔軟に行われるようになってきました。

「ひょっとして…」と思ったら、まずはオンライン診療で専門医に相談(リンク先)してみましょう。早期発見・治療により、快適な睡眠と健康を取り戻すことができます。

※本記事は、最新の研究知見に基づき執筆していますが、実際の医療判断は主治医とよく相談して行ってください。症状や対応策には個人差があります。不明点があれば遠慮なく専門医にお問い合わせください。

 

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睡眠時無呼吸症候群をもっと詳しく

睡眠時無呼吸症候群(SAS)について、さらに詳しく知りたい方は各記事をご確認ください。

治療

検査

予防

合併症

症状

原因

傾向

疑い

 

 

参考文献

[1] [2] [19] Nasal inflammation in sleep apnoea patients using CPAP and effect of heated humidification – PubMed

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20595158/

[3] [6] [7] [8] [9] Association of Allergic Rhinitis With Change in Nasal Congestion in New Continuous Positive Airway Pressure Users | Allergy and Clinical Immunology | JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery | JAMA Network

https://jamanetwork.com/journals/jamaotolaryngology/fullarticle/2764149

[4] Continuous Positive Airway Pressure (CPAP) Induces Early Nasal …

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2225550/

[5] Dose response of continuous positive airway pressure on nasal …

https://publications.ersnet.org/content/erj/40/5/1180

[10] [11] Life | Special Issue : Obstructive Sleep Apnea Syndrome: History, Current Status, Perspectives

https://www.mdpi.com/journal/life/special_issues/Sleep_Syndrome

[12] [13]  A sleep clinician’s guide to runny noses: evaluation and management of chronic rhinosinusitis to improve sleep apnea care in adults – PMC

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10394352/

[14] Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep …

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15781100/

[15] Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep …

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673605711417/abstract

[16] [17] Mouth Breathing Compromises Adherence to Nasal Continuous Positive Airway Pressure Therapy – CHEST

https://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(15)31303-9/abstract

[18] Mouth closing device (chinstrap) reduces mouth leak during nasal …

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1389945703002521

[20] [21] [22] [23] Effects of humidification on nasal symptoms and compliance in sleep apnea patients using continuous positive airway pressure – PubMed

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10453869/

[24] [25] Effects of intranasal steroids on continuous positive airway pressure compliance among patients with obstructive sleep apnea – PubMed

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33104981/

[26] [27] Surgical correction of nasal obstruction in obstructive sleep apnea improves CPAP outcomes and compliance – PubMed

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35083644/

[28] [29] Evidence Brief: Oral Appliances for Sleep-Related Breathing Disorders

https://www.ada.org/-/media/project/ada-organization/ada/ada-org/files/resources/research/ada_sci_oralappl_srbd_brief_final_15.pdf

[30] [31] Oral Appliance Therapy for Obstructive Sleep Apnea: Clinical Benefits and Limitations

https://sleepmedres.org/journal/view.php?doi=10.17241/smr.2023.01921

[32] [33] Prevalence of undiagnosed obstructive sleep apnea among adult surgical patients in an academic medical center – PubMed

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19186102/

 

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