睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を始めた患者様から「CPAP治療を受けているが息苦しい」「BiPAPという治療法があると聞いたが、違いは何か」といったご質問をいただくことがあります。
森下駅前クリニックでは、呼吸器内科専門医として多くの睡眠時無呼吸症候群患者様の治療を行っており、一人ひとりの症状や病態に最適な治療法をご提案しています。今回は、CPAPとBiPAPの違いについて、医学的根拠に基づいて詳しく解説いたします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は森下駅前クリニックまで
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結論:最大の違いは「息を吐くときの圧力」。CPAPは1段階、BiPAPは2段階
まず結論!一目でわかる比較表
項目 | CPAP (持続陽圧呼吸療法) | BiPAP (二相性陽圧呼吸療法) |
圧力設定 | 1段階(吸う時も吐く時も一定) | 2段階(吸う時と吐く時で圧を変更) |
例え | 常に一定の風が吹くトンネル | 呼吸に合わせ追い風・向かい風を調整 |
息の吐きやすさ | 圧に逆らって吐くため苦しいことがある | 吐く時の圧を下げられるため楽に吐ける |
主な役割 | 気道の閉塞を防ぐ | 気道の閉塞を防ぐ+呼吸の補助 |
圧力のかかり方の違い
CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、英語で”Continuous Positive Airway Pressure”の略称で、その名の通り持続的に一定の陽圧を気道に供給する治療法です。設定圧力は通常4-20cmH2Oの範囲で、吸気時も呼気時も同じ圧力が維持されます。
一方、BiPAP(二相性陽圧呼吸療法)は”Bilevel Positive Airway Pressure”の略で、吸気時の圧力(IPAP)と呼気時の圧力(EPAP)の2つの圧力レベルを使い分けます。これにより、吸気時はより高い圧力で気道を開き、呼気時は低い圧力にして息を吐きやすくします。
なぜCPAPは息苦しい?BiPAPが適応となるのはどんな人?
CPAPで息苦しさを感じる理由
CPAP療法では呼気時にも一定の陽圧がかかり続けるため、患者は呼気時にこの圧力に逆らって息を吐く必要があります。この呼気抵抗が「息苦しさ」として感じられる主要な原因です。
特に高圧設定が必要な重症睡眠時無呼吸症候群の患者では、この呼気困難感が顕著に現れることが報告されています。
BiPAPへの変更を検討する具体的なケース
大規模データ解析研究により、以下のような場合にBiPAP療法への変更が検討されることが明らかになっています。
・CPAP不耐性(CPAP療法開始90日以内にアドヒアランス(治療継続率)の基準を満たせない患者において、BiPAPへの変更により多くの患者が治療継続基準を満たすことができたと報告されています。)
・中枢性睡眠時無呼吸症候群(中枢性睡眠時無呼吸に対しては、BiPAP-STモードが有効な治療選択肢となります。)
・合併症を有する睡眠時無呼吸症候群(肥満低換気症候群や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併している患者では、BiPAP療法がより適している場合があります。)
・高い治療圧が必要な重症例(高圧CPAP設定時の呼気困難感により治療継続が困難な症例において、BiPAPの呼気圧軽減効果が有用とされています。)
CPAPとBiPAP、それぞれのメリット・デメリットと費用
メリット・デメリット比較
CPAP療法のメリット
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する第一選択治療として確立されている
・装置がシンプルで操作が容易
・携帯用モデルが豊富で旅行時も便利
・BiPAPと比較して費用が安価
CPAP療法のデメリット
・呼気時の圧力抵抗による不快感
・高圧設定時の忍容性の問題
・中枢性睡眠時無呼吸には効果が限定的
BiPAP療法のメリット
・呼気時圧力の軽減により呼吸が楽になる
・複雑な睡眠関連呼吸障害に対応可能
・バックアップレート機能で呼吸補助が可能
・CPAP不耐性患者への有効な代替治療
BiPAP療法のデメリット
・装置がより複雑で設定調整が必要
・CPAP比較で機器費用が高額
・携帯性に劣る場合が多い
費用はどれくらい変わる?
日本の健康保険制度では、睡眠時無呼吸症候群の治療は保険適用となります。CPAP療法では月額約4,000-5,000円の自己負担で治療を受けることができます。BiPAP療法も適応基準を満たした場合には同様に保険適用となります。
月々の維持費用として、マスクやフィルターなどの消耗品、定期的な医師による診察・評価、機器のメンテナンス費用がありますが、これらも保険診療の範囲内で対応可能です。
ただし、BiPAP療法については、CPAP療法で効果不十分または不耐性が認められる場合に限定されることが多く、医師による詳細な評価が必要となります。
CPAPの息苦しさを感じたら…オンライン診療で専門医にご相談を
CPAP治療中に息苦しさや不快感を感じている方は、決して一人で悩まず、まずは専門医にご相談ください。症状や病態に応じて、以下のような対策をご提案できます。
・圧力設定の最適化:現在の設定が適切かどうかの再評価
・マスクフィッティングの改善:エアリークの確認とマスク調整
・機器の変更検討:BiPAPへの変更の適応評価
森下駅前クリニックでは、オンライン診療も行っており、お忙しい方や通院が困難な方でも専門医による診察を受けていただけます。睡眠の質の改善は、生活の質の向上に直結する重要な治療です。
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合はオンライン診療へ
睡眠時無呼吸症候群は、放置すると心血管疾患、糖尿病、脳血管障害などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。適切な診断と治療により、これらのリスクを大幅に軽減することができます。
CPAPからBiPAPへの変更が必要かどうかは、詳細な症状の評価と睡眠検査結果の解析が必要です。森下駅前クリニックでは、呼吸器内科専門医として豊富な経験を持つ医師が、患者様一人ひとりの状態に最適な治療法をご提案いたします。
息苦しさや治療への不安を感じている方は、ぜひお気軽にオンライン診療をご利用ください。適切な治療により、質の高い睡眠と健康的な毎日を取り戻すお手伝いをいたします。
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合併症
症状
原因
傾向
疑い
引用文献
NCBI Bookshelf. Continuous Positive Airway Pressure – StatPearls. National Center for Biotechnology Information, U.S. National Library of Medicine. PMID: NBK482178.
Pałasiewicz G, Sliwiński P, Hawrylkiewicz I, et al. Acute effects of CPAP and BiPAP breathing on pulmonary haemodynamics in patients with obstructive sleep apnoea. Eur Respir J. 1998;11(4):887-92. PMID: 9510662.
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Compliance after switching from CPAP to bilevel for patients with non-compliant OSA: big data analysis. BMJ Open Respir Res. 2019;6(1):e000380. PMC: PMC6530496.
CPAP and Bi-level PAP Therapy: New and Established Roles. Proc Am Thorac Soc. 2011;8(4):341-7. PMC: PMC3119924.
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