【医師が回答】CPAPは一生つけないとダメ?絶望する前に知ってほしい3つの選択肢

 

CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の重症例に効果的な治療です。睡眠中に気道を広げ、無呼吸・いびきを防ぐことで、日中の眠気や高血圧、心血管リスクの改善につながります[1]。

 

しかし「CPAPは一生使わないといけない」と言われることも多く、装着の煩わしさに絶望する方も少なくありません。本当にCPAPを一生続けなければならないのか、その真意をまず説明します。

 

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なぜ「CPAPは一生」と言われるのか?その本当の意味

OSAの原因の多くは肥満や鼻・喉の解剖学的問題であり、これら自体を完全に解決しない限り無呼吸は再発します。

CPAPはあくまで睡眠中の気道閉塞を補助する治療法であり、「根治」させる治療ではありません。

つまり、CPAPを外せば元の無呼吸状態に戻る可能性が高いのです。実際、CPAPを継続することで日中の眠気や血圧を改善できますが、装着をやめると症状は再燃します[1]。

この点は他の慢性疾患(糖尿病や高血圧など)の治療と同様で、薬をやめれば病状が元に戻るのと似ています。

そのため医師は「CPAPは一生の治療」と例えますが、それは「現状の原因を放置すれば無呼吸が戻る」という意味であり、必ずしも文字通り終生継続しなければならないというわけではありません。

 

例えるなら眼鏡のようなものです。近視眼鏡をかけて視界がはっきりしていても、眼鏡を外せば元通り見えにくくなります。

CPAPも同様に、装着している間は呼吸が安定し安心ですが、中止すれば無呼吸が復活します。

つまり、CPAPは「対症療法」「合併症予防対策」であり、原因療法ではない点をご理解ください。

ただし「CPAPは不変の一生モノ」ではなく、将来の体重変化や医療の進歩により新たな選択肢が生まれる可能性はあります。

 

第1の選択肢:CPAPからの「卒業」を目指す道

もしCPAPを「終わりにしたい」、すなわち無呼吸の根本改善によってCPAP装着をやめたいと考えるなら、医師の指導のもとで以下のような方法を検討します。

自己判断でやめるのは危険ですので、必ず再検査や相談を経て決めましょう。

 

体重減少による改善

OSAの最も多い原因は肥満です。減量に成功すれば、無呼吸の程度が大幅に減少することが多くの研究で示されています。

実際、8週間の集中的な減量・生活習慣改善プログラムを行った臨床試験では、内的対照群と比べて介入群の無呼吸指数(AHI)が約57%低下し、参加者の61.8%がCPAPを必要としなくなり、29.4%はOSAが完全寛解(AHI正常域)しました[2]。

ガイドラインでも、肥満を伴うOSA患者には減量療法の併用が強く推奨されています(エビデンスレベルC)[2]。

まずは食事制限や運動で減量を試み、6ヵ月以上続けて改善が見られれば、医師の下で再度ポリソムノグラフィー(PSG)などの検査を受け、CPAP卒業の可能性を評価します。

体重が大幅に減少し、無呼吸が劇的に軽減すれば、CPAPから「卒業」できる場合もあります。

 

外科手術の検討

肥満以外に鼻・喉の解剖学的狭窄が無呼吸の原因の場合、手術で気道を広げる選択肢があります。

例として口蓋扁桃腺の摘出(扁桃摘出術)、アデノイド切除、鼻中隔矯正、あるいは舌根部を引き上げる手術などです。最近では、口蓋部+舌根部の多段階手術(SAMS試験)が試験的に行われています。

このRCTではCPAP非許容者を対象に手術群と従来治療群を比較し、手術6ヵ月後の平均AHIは手術群で47.9→20.8、従来群で45.3→34.5と手術群の方が有意に低下しました(群間差-17.6)[3]。

また、AHI<10(寛解基準)に到達した割合は手術群26%、従来群8%(差18%)で、手術がかなり有効であることが示されました[3]。

もちろん手術の適応には限りがあり、重症例向けの侵襲的な方法もありますので、専門医とよく相談する必要があります。

 

自己判断禁止・再検査の徹底

CPAP中止を考える場合、必ず医療機関で再度評価を受けてください。

体重減少や手術を試みて無呼吸が改善したかどうかは、PSGなど正式な検査で確認する必要があります。

自己判断でCPAPをやめると、知らぬ間に無呼吸が再発し、合併症リスクが高まる危険があります。

医師と相談しながら段階的に検査・評価を行い、CPAP卒業の可否を慎重に判断しましょう。

 

第2の選択肢:「一生」の負担を減らし、快適に付き合う道

「一生CPAP」という言葉に苦痛を感じるなら、考え方と環境を変えて“負担”を軽減する方向にシフトしましょう。以下のような方法があります。

 

「一生の安心」への思考転換

CPAPは確かに装着に不便はありますが、その分、無呼吸による心臓への負担や日中眠気のリスクを軽減し、安心につながります。

CPAP治療により低下した血圧は薬物治療や減量以上の効果があるとされ、心血管リスクが下がることも報告されています[1]。

一方、CPAP未使用時には高血圧や動脈硬化が悪化する可能性があります。言い換えれば、「CPAPを使う負担」と、「無呼吸による健康リスク」のどちらがより重いか、比較してみてください。

多くの患者さんは当初「負担」と感じていたものも、使い続けるうちに「安心」に変わっていきます。

 

最新機器と工夫で快適に

CPAP装置やマスクは年々改良が進んでおり、使用感は向上しています。

たとえば、加湿器付きや静音設計の機種、呼気圧を低減する機能(C-Flex、EPRなど)、自動調整型CPAP(APAP)などが普及しています。

APAPに呼気圧低減(C-Flex)機能を併用した場合、通常CPAPと同等に睡眠中の呼吸障害を抑えつつ、患者の満足度が明らかに高いとのRCT報告があります[4]。

この試験ではAPAP+C-Flexを使用した群で、ほとんどの患者が「通常CPAPよりこちらが好ましい」と回答しており、適応患者では依存性が高まる可能性が示唆されました[4]。

また、マスクの選択肢も豊富で、鼻マスクや鼻孔パッド(ナザルマスク)、フルフェイスマスクなど、自分に合ったものを試すことができます。

最適なマスクと設定で乾燥や圧迫感を減らし、快適さを追求しましょう[4]。

 

オンライン診療・モニタリング活用

近年、遠隔診療や通信モニタリングが普及し、CPAPのフォローアップも自宅で行いやすくなりました。

機器内蔵の通信機能で使用データを送信し、医師や医療機関が遠隔で確認・指導を行うことが可能です。

あるRCTでは、テレメディシン介入群では6ヵ月後のCPAP使用時間に差はなかったものの、睡眠関連の生活の質(QOL)が有意に改善したと報告されています[5]。

つまり、通院せずとも細かなケアやアドバイスを受けられる仕組みが整っており、医療機関への頻繁な通院という苦痛が軽減できます。

オンライン診療の利用により、病院への移動時間や仕事の休みを気にせずCPAPを継続できる点も大きなメリットです。

 

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第3の選択肢:もしCPAPが合わないなら…他の治療法を再検討する

万一CPAP装置がどうしても身体に合わない、あるいは使い続けられない場合は、CPAP以外の治療法を検討しましょう。

ただし、CPAPで効果が得られなかった場合でも代替療法の効果には限界があるため、必ず専門医の指導下で行います。

 

口腔内装置(スリープスプリント)療法

上下の歯に装着するマウスピース(スリープスプリント)で下顎を前方に固定し、睡眠中に舌根部の気道閉塞を防ぎます。

主に軽~中等症のOSAに適応され、低侵襲である点が特徴です。システマティックレビューでは、CPAPと比較してAHI改善効果は劣るものの、治療後の眠気改善(ESS)には両者で有意差がないと報告されています[6]。

結論として、CPAPがゴールドスタンダードである一方で、「CPAPが使えない・好まない」患者にはマウスピース療法を選択肢とすることが推奨されています[6]。

 

体位療法(睡眠姿勢の工夫)

仰向けでのみ無呼吸が起こる「体位依存型OSA」の場合、横向き姿勢(または腹臥位)で眠るように工夫するだけで症状が軽減することがあります。

専用の背中側パッド付きウェアや枕で仰向け寝を防止する機器も市販されています。

ただし、体重増加などで病態が変化すると効果が弱まることもあります[7]ので、継続観察が必要です。

 

耳鼻咽喉科的手術

扁桃腺摘出やアデノイド切除といった上気道拡大手術も、中等度以下のOSAには有効なことがあります。

ガイドラインでも、OSA治療には手術療法(扁桃・アデノイド摘出等)を含めて多様な選択肢があることが示されています[8](※ガイドラインではCPAP・マウスピース・減量・手術等が列挙されています)。

先述の多段階手術やMaxillomandibular Advancement(顎骨前方移動術)など専門的な手術もありますが、まずは耳鼻科で相談し、患者さんの症状に応じた手術可否を検討します。

 

舌下神経刺激療法(Hypoglossal Nerve Stimulation)

比較的新しい治療で、舌を前方に突き出す神経を電気刺激して気道を広げる埋め込み型デバイスです。

CPAP療法がどうしても不可能な重症OSA患者に対し、欧州呼吸器学会(ERS)は「標準治療(CPAP)が耐容できない場合のサルベージ治療」として推奨しています[9]。

例えば、バイラテラル型の刺激装置では6ヵ月後のAHIが約45%改善したという報告があります[9]。

ただし適応基準が厳しく、高額かつ侵襲的な治療なので、専門機関での評価・選択が必須です。

 

以上、CPAPが合わない場合でも選択肢は複数あります。ただしどの治療も効果に個人差があり、ケースバイケースで最適な組み合わせを考える必要があります。最終的には専門家と相談し、自分のライフスタイルや病態に合った治療法を選択しましょう。

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、まずは専門医での検査・診断を受けることが大切です。近年はオンライン診療や簡易検査も普及しており、通院が難しい方も自宅で検査・相談できる環境が整いつつあります。

症状(いびき、日中の強い眠気など)に心当たりがあれば、かかりつけ医やオンライン睡眠外来で相談しましょう。適切に治療を開始すれば、健康への不安も軽減され、生活の質が大きく向上します。

 

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睡眠時無呼吸症候群をもっと詳しく

睡眠時無呼吸症候群(SAS)について、さらに詳しく知りたい方は各記事をご確認ください。

治療

検査

予防

合併症

症状

原因

傾向

疑い

 

 

参考文献

[1] Carneiro-Barrera A, Amaro-Gahete FJ, Guillén-Riquelme A, et al. Effect of an interdisciplinary weight loss and lifestyle intervention on obstructive sleep apnea severity: the INTERAPNEA randomized clinical trial. JAMA Netw Open. 2022;5(4):e228212.
[2] McKay SG, Woodman R, Gleadhill IC, et al. Effect of multilevel upper airway surgery vs medical management on AHI and sleepiness in OSA: the SAMS randomized clinical trial. JAMA. 2020;324(9):889–898.
[3] Mulgrew AT, Cheema R, Fleetham JA, et al. Efficacy and patient satisfaction with auto-adjusting CPAP with expiratory pressure relief vs standard CPAP: a randomized crossover trial. Sleep Breath. 2007;11(1):31–37.
[4] Schoch OD, Baty F, Boesch M, et al. Telemedicine for continuous positive airway pressure in sleep apnea: a randomized, controlled study. Ann Am Thorac Soc. 2019;16(12):1550–1557.
[5] Pattipati M, Gudavalli G, Zin M, et al. CPAP vs mandibular advancement devices for obstructive sleep apnea: a systematic review and meta-analysis. Cureus. 2022;14(1):e21759.
[6] Verbraecken J, Vroegop AV, Hamans E, et al. Non-CPAP therapy for obstructive sleep apnoea. Breathe (Sheff). 2022;18(2):220045.

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【医師監修】CPAPの飛行機への機内持ち込み完全ガイド|JAL・ANAのルール、保安検査、海外での使い方

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)でCPAP(持続陽圧呼吸療法)を利用している方にとって、出張や旅行、特に飛行機での長距離移動は大きなハードルに感じられるかもしれません。

「飛行機にCPAP装置を持ち込めるのか?」「保安検査や機内での取り扱いは?」「海外で電源が合わなかったら?」など、不安や疑問を抱く患者さんも多いでしょう。

本記事では、JAL・ANAをはじめ主要な海外航空会社(United Airlines、Emirates、Lufthansa等)にも対応した最新の航空会社ルール、事前準備から当日・機内でのポイント、保安検査、さらに海外での使用や時差ボケ対策まで、解説します。

 

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CPAPは「手荷物として機内持ち込み」が大原則!

多くの患者さんがまず気になるのが「CPAPは機内持ち込みできるのか?」という点です。結論から言えば、CPAPはほぼすべての航空会社で医療用電子機器として『手荷物持ち込み』が原則となっています[1][2]。

預け入れ荷物には絶対にしないでください。万が一の紛失や破損、積み残し、温度・気圧変化によるトラブル、電源ON状態のまま預けてしまうことによる危険性など、リスクが非常に高いためです[1][2]。

特に以下の点を守りましょう。

  • 搭乗手続き時にCPAPを持参していることを伝える
  • 電池(バッテリー)は取り外し、必ず手荷物として持ち込む
  • 日本・海外ともに機内でのCPAP使用が許可されているか事前に確認する
  • 医師による診断書(英文含む)の携帯(必要な場合)

航空会社ごとの基本ルール

  • JAL・ANA:CPAPは原則持ち込み可能。診断書や事前申告は不要だが、座席や電源利用を希望する場合は事前に相談[2][3]。
  • United Airlines/Emirates/Lufthansa:事前申告・メーカーや型番・バッテリー情報の提供が必須。英文診断書やTravel Letterを求められる場合あり[4][5][6]。

【出発前の準備】完璧な旅行のための5ステップ・チェックリスト

 

ステップ1:航空会社への事前連絡

フライトの予約が済んだら、必ず航空会社に「CPAP持ち込み・利用希望」である旨を連絡してください。必要に応じて、以下の情報を用意します。

  • 機種名・型番・製造元
  • サイズ・重量・電源仕様
  • バッテリー有無・種類・容量

航空会社によっては、バッテリーのW数・容量や「安全性証明書」提出を求められることもあります[1][4]。

ANAやJALは「ANAおからだの不自由な方の相談デスク」や「JALプライオリティゲストセンター」など専用窓口があり、CPAPの持ち込みや電源利用の可否、バッテリーの取扱いについて丁寧に対応してもらえます[2][3]。

海外航空会社(United/Emirates/Lufthansa等)は、公式サイトまたはカスタマーセンターで詳細な手続きが求められる場合も多く、英文診断書の提出や使用目的の説明が必要なこともあります[5][6]。

 

ステップ2:【海外の場合】主治医に「英文診断書」を発行してもらう

海外フライトや外資系エアライン利用時は、英文の「Medical Certificate」「Doctor’s Letter」「Travel Compliance Letter」など診断書・証明書を求められることが多いです[7][8]。

 

内容例:

  • 患者氏名、生年月日、診断名(Obstructive Sleep Apnea等)、CPAP治療が必要な旨
  • 携帯機器の型番・メーカー名・電源仕様
  • 機内持ち込み・機内使用が必要な理由

診断書は英文で1通あれば複数の場面で役立ちます。必要に応じて日本語と英文の両方を用意しておくと安心です[7]。

 

ステップ3:持ち物のパッキングと最終確認

CPAP本体・マスク・チューブ・電源コード・変圧器・バッテリー・取扱説明書(英文含む)・診断書など、「旅行専用セット」としてまとめて準備しましょう[1]。

【必須アイテム一覧】

  • CPAP本体(予備フィルターも)
  • マスク・チューブ・加湿器(必要な場合)
  • ACアダプタ・電源ケーブル
  • 海外対応の変換プラグ(A/B/C/O型など、渡航先に合わせて複数用意)
  • 必要に応じて変圧器(100V/220V両対応のCPAPが多いが念のため確認)
  • バッテリー(リチウムイオンなら容量・個数に注意)
  • 英文診断書・Travel Letter(機種情報入り)
  • 保険証・診察券
  • 各航空会社対応の説明書(ウェブサイトなどプリント推奨)

ステップ4:【海外の場合】電源プラグと電圧の確認

世界各国で電圧やプラグ形状は異なります。

  • 日本:100V(A型)
  • 米国・カナダ:110-120V(A/B型)
  • 欧州:220-240V(C/E/F型など)
  • アジア諸国・中東:国ごとに異なる

CPAPはほとんどが100~240V自動対応のモデルですが、古い機種や加湿器のみ別対応のものもあるため、取扱説明書で再確認しましょう[1][5]。

変圧器が必要な場合は余裕を持ったW数のものを用意し、現地での電力トラブルやヒューズ切れを防ぎます[5]。

また、現地での予備ヒューズやプラグアダプタは出発前に日本で購入しておくと安心です。

ステップ5:【機内で使用する場合】バッテリーの準備とルール確認

機内でCPAPを使いたい場合や長時間フライトの場合は、CPAP対応のポータブルバッテリーが必須です。

  • バッテリーは原則「手荷物としてのみ」持ち込み可。預け入れ不可。
  • 国際線では「フライト時間×1.5倍以上」使用できる容量の予備バッテリーが推奨[6][9]。
  • リチウムイオン電池の場合は160Wh未満が一般的な基準です。

ANA/JALとも公式に「機内持ち込み可」「事前連絡で個別対応」と明記されています[2][3]。海外航空会社でも多くが同様ですが、機内使用には「メーカー指定」「バッテリー型番・容量情報」など詳細が求められる場合も多いので、必ず事前に航空会社の公式規定を確認しましょう[4][5][6]。

 

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【搭乗当日】空港での流れをシミュレーション

保安検査場でのポイント

  • 手荷物検査の際は「医療機器(CPAP)です」と自己申告しましょう。保安検査員はCPAPに慣れている場合も多いですが、英文説明書や診断書があるとスムーズです[1][7]。
  • バッテリーやアダプタは分かりやすく取り出しやすい位置に入れておき、必要があれば別に提出します。
  • 液体(水タンク)は容量に注意し、規定量を超える場合は空にしておくと無難です(加湿器機能の水分は検査時に確認される場合あり)。
  • セキュリティチェック時に分解や稼働テストを求められることはほぼありませんが、不測の事態に備えて取扱説明書も持参しましょう。

搭乗後・機内での流れ

  • CPAPは座席下または前席ポケットに収納し、使用時はCA(客室乗務員)に事前に相談。
  • 使用開始は「シートベルト着用サイン消灯後」が基本。離着陸時は電源オフが原則です[3][4]。
  • 座席の電源が使える場合も、出力やプラグ形状が異なることが多いため、必ず自前のバッテリーを持参
  • 周囲への配慮として、マスクの音や加湿器の蒸気に注意。静音タイプのCPAPや「マイクロ型マスク」などを活用しましょう。
  • バッテリー切れを防ぐため、長距離フライトや乗り継ぎ時は「新しいバッテリー・予備バッテリー」を必ず携行しましょう。
  • フライト後はマスク・チューブの洗浄や乾燥も忘れずに行い、現地での睡眠環境も整えます。

国際線の追加注意点

  • United Airlines:CPAP持ち込み・使用には事前申請が必須で、機種によっては「特別な医療機器認証」が必要[4]。
  • Emirates:公式サイトでCPAP持ち込み・使用の流れを明記。バッテリー情報の提供とTravel Letter(医師証明書)が必須[5]。
  • Lufthansa:CPAPの持ち込みは医療機器として許可。欧州便は電源プラグ形状が特殊なため、専用アダプタ必須[6]。

【専門医が教える】CPAPユーザーのための時差ボケ対策

飛行機での長距離移動では「時差ボケ」も大きな問題になります。SAS患者さんは、CPAPを継続使用することで、旅先でも質の高い睡眠を保つことが重要です[10][11]。

  • 機内・現地でも毎晩CPAPを継続して使用
  • 旅行直前から出発地・目的地の時差にあわせて睡眠時間を調整
  • 到着後は太陽の光を積極的に浴び、体内時計の調整を促す
  • 適度な運動や食事時間の調整も有効
  • メラトニン補助食品の活用も有効性が認められています[12]

さらに、最新のRCTでもCPAP治療継続が睡眠の質・認知機能・日中活動性の改善につながることが確認されており[10][11]、旅行中の体調維持にも役立ちます。

【海外でのCPAP使用】現地で注意したいポイント

  • ホテル・宿泊施設では「事前に電源・プラグの種類」を確認
  • 水道水の衛生環境に注意し、加湿器用の水は市販のミネラルウォーターや精製水を利用
  • 現地での気圧変化や乾燥にも注意し、マスクフィットや加湿機能を調整
  • CPAPが故障した場合の対応先(現地代理店・購入元)を事前に調べておくと安心
  • 万一のトラブルに備え、日本の主治医・専門クリニックの連絡先も控えておく

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合はオンライン診療へ

2024年6月以降、CPAP療法も保険適用でオンライン診療が可能となり[13]、自宅で専門医のフォローアップが受けられる時代となりました。

遠方の患者さん、頻繁な通院が難しい方も、検査やCPAP療法の継続管理、旅先からの相談もオンラインで気軽に行えるようになっています。

睡眠時無呼吸症候群が疑われる方は、ぜひオンライン診療の活用を検討してください。

 

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睡眠時無呼吸症候群をもっと詳しく

睡眠時無呼吸症候群(SAS)について、さらに詳しく知りたい方は各記事をご確認ください。

治療

検査

予防

合併症

症状

原因

傾向

疑い

 

 

参考文献

[1] 帝人ファーマ株式会社. 飛行機を利用して旅行・出張先などでCPAP装置をご使用になる方へ.
[2] ANA公式ウェブサイト「睡眠時無呼吸症候群(CPAPご利用)のお客様」
[3] JAL公式ウェブサイト「CPAP機器の持ち込み・利用について」
[4] United Airlines. Medical Devices Onboard: CPAP and Oxygen Use.
[5] Emirates. Travelling with Medical Devices.
[6] Lufthansa. Travelling with medical equipment.
[7] ResMed. Travel with CPAP devices – compliance and documentation.
[8] 睡眠医療ガイドライン委員会. 睡眠時無呼吸症候群診療ガイドライン2020.
[9] Sleep Health Foundation. Travelling with CPAP.
[10] J. M. Montserrat et al. Effectiveness of CPAP treatment in daytime function in sleep apnea syndrome: a randomized controlled study. Am J Respir Crit Care Med. 2001;164(4):608-613.
[11] Oumaïma Benkirane et al. Impact of CPAP Therapy on Cognition and Fatigue in Patients with Moderate to Severe Sleep Apnea: A Longitudinal Observational Study. Brain Sciences. 2024;14(2):465.
[12] Herxheimer A, Petrie KJ. Melatonin for the prevention and treatment of jet lag. Cochrane Database Syst Rev. 2002;(2):CD001520.
[13] 無呼吸ラボ. オンライン診療について – 睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療がオンライン診療でも可能に.

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CPAP治療はいつまで続く?やめられる3つの条件と上手な付き合い方を専門医が解説

 

「CPAPはいつまで続けなければならないのか?」

これは、CPAP治療を始めた多くの患者さんから寄せられる切実な質問です。毎晩機械を装着して眠る生活に、いつか終わりが来るのかと不安に思われるのは当然のことでしょう。

森下駅前クリニックで呼吸器内科を専門に診療している医師として、本記事では、CPAP治療の継続期間について医学的根拠に基づいて詳しく解説します。また、治療を卒業できる可能性がある条件や、長期的に治療と上手に付き合っていくコツについてもお伝えします。

 

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CPAP治療は原則「対症療法」。高血圧の薬と同じです

まず理解していただきたいのは、CPAP治療は睡眠時無呼吸症候群の根本的な原因を治す「根治療法」ではなく、症状を抑える「対症療法」であるということです[1]。これは高血圧の薬と同じような位置づけです。高血圧の薬が将来的な血管系トラブルの確率を下げるようにCPAP治療もまた無呼吸症候群に伴う血管系トラブルへの予防効果が認められます。

高血圧の薬を飲んでいる間は血圧が下がりますが、薬をやめれば血圧は元に戻ってしまいます。同様に、CPAPを使用している間は気道が確保されて無呼吸が改善しますが、使用をやめれば症状は再発してしまうのです。

実際、多くの研究でCPAP治療の長期継続が必要であることが示されています。ある研究では、CPAP治療開始から5年後も68%の患者さんが治療を継続していたと報告されています[2]。つまり、多くの方にとってCPAP治療は長期的な取り組みになるということです。

CPAP治療が不要になる(卒業できる)3つの条件

それでは、CPAP治療を卒業できる可能性はないのでしょうか?実は、以下の3つの条件のいずれかを満たした場合、CPAP治療が不要になることがあります。

条件1:肥満が原因の場合、大幅な「減量」に成功した

睡眠時無呼吸症候群の最も一般的な原因は肥満です。体重が増加すると、のどの周りに脂肪が蓄積し、気道が狭くなってしまいます。そのため、大幅な減量に成功すれば、CPAP治療が不要になる可能性があります。

スペインで行われた研究では、体重減少とライフスタイル改善プログラムを8週間実施した結果、6か月後に61.8%の患者さんがCPAP治療を必要としなくなり、29.4%の患者さんで睡眠時無呼吸症候群が完全に改善したと報告されています[3]。

別の研究でも、5%の体重減少で睡眠時無呼吸の症状が改善し、10%の減量でさらに大きな改善が見られることが示されています[4]。ただし、これらの効果を得るためには、相当な努力と継続的な体重管理が必要です。

条件2:喉や鼻の「外科手術」で物理的な原因が解消された

扁桃腺の肥大、口蓋垂の肥大、鼻中隔弯曲症など、気道を物理的に狭くしている原因がある場合、外科手術によってこれらを改善することでCPAP治療が不要になることがあります。

最も一般的な手術は口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)です。この手術では、口蓋垂、軟口蓋の一部、扁桃腺などを切除して気道を広げます。ただし、手術の成功率は患者さんの解剖学的特徴によって大きく異なり、完全にCPAPが不要になるケースは限定的です[5]。

Friedman分類によるステージIの患者さん(扁桃腺が大きく、軟口蓋の位置が高い)では80.6%の成功率が報告されていますが、肥満度が高い患者さんでは成功率は8.1%まで低下します[6]。

条件3:原因となる他の病気(鼻炎など)が改善した

アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などによる鼻閉が睡眠時無呼吸を悪化させている場合、これらの基礎疾患を治療することで睡眠時無呼吸が改善し、CPAP治療が不要になることがあります。

ある研究では、アレルギー性鼻炎を持つ睡眠時無呼吸症候群の患者さんに鼻腔内ステロイド薬を10-12週間使用したところ、無呼吸低呼吸指数(AHI)が11イベント/時間減少し、最低酸素飽和度が約2%改善したと報告されています[7]。

ただし、鼻炎の治療だけで睡眠時無呼吸症候群が完全に改善することは稀で、多くの場合はCPAP治療と併用することで、より快適に治療を継続できるようになります。

絶対にダメ!自己判断でCPAPをやめることの深刻なリスク

「調子が良いから」「面倒だから」といった理由で、医師の指示なくCPAP治療を中断してしまう患者さんがいらっしゃいます。しかし、これは非常に危険な行為です。

症状の再燃と生活の質の低下

CPAP治療を中断すると、多くの場合、数日以内に元の症状が再発します。日中の眠気、集中力の低下、疲労感などが再び現れ、生活の質が著しく低下します[8]。

ある研究では、CPAP治療を1晩中断しただけで、翌日の眠気や認知機能の低下が見られたと報告されています[9]。

重大な合併症のリスクが再び高まる

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などの重大な合併症のリスクを高めます。CPAP治療によってこれらのリスクは低下しますが、治療を中断すれば再びリスクが上昇します。

30年間の長期追跡調査では、CPAP治療を継続した患者さんは、治療を受けなかった患者さんと比較して生存率が約6倍高かったことが示されています[10]。

保険適用の停止

日本では、CPAP治療の保険適用を継続するためには、毎月の受診と一定以上の使用実績が必要です。自己判断で治療を中断し、受診を怠ると保険適用が停止され、再開時に高額な自己負担が発生する可能性があります。

「いつまで」の不安を解消!治療と上手に付き合う3つのコツ

CPAP治療が長期にわたることを受け入れた上で、いかに快適に、前向きに治療を継続していくかが重要です。以下に、治療と上手に付き合うための3つのコツをご紹介します。

治療の効果を「見える化」して実感する

CPAP治療の効果を実感することは、治療継続のモチベーション維持に重要です。最近のCPAP機器は使用データを記録しており、以下のような情報を確認できます:

  • 1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)
  • 使用時間と使用日数
  • マスクのリーク(空気漏れ)量

これらのデータを医師と一緒に確認し、治療前後でどれだけ改善したかを「見える化」することで、治療の意義を実感できます。

毎日の治療を「快適」にする工夫

CPAP治療を快適にするための工夫は数多くあります:

  1. 適切なマスク選び:鼻マスク、フルフェイスマスク、鼻ピローなど、様々なタイプがあります。自分に合ったマスクを見つけることが重要です。
  2. 加湿器の活用:CPAP使用による鼻や喉の乾燥を防ぐため、加温加湿器の使用が推奨されます[11]。
  3. 圧力設定の調整:オートCPAPやBiPAPなど、より快適な圧力設定が可能な機器への変更も検討できます。
  4. アレルギー対策:アレルギー性鼻炎がある場合は、抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイド薬の併用で快適性が向上します[12]。

治療の「負担」そのものを軽くする

CPAP治療の負担を軽減する方法もあります:

  1. 体重管理:減量によってCPAPの設定圧を下げられる可能性があります。圧力が下がれば、より快適に使用できます。
  2. 生活習慣の改善:禁煙、節酒、規則正しい睡眠時間の確保などにより、睡眠時無呼吸の重症度が改善する可能性があります。
  3. 定期的なメンテナンス:マスクやチューブの定期的な清掃・交換により、衛生的で快適な使用環境を維持できます。

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CPAP治療は多くの患者さんにとって長期的な取り組みとなりますが、適切な管理と工夫により、快適に継続することが可能です。また、体重減少や基礎疾患の改善により、将来的に治療を卒業できる可能性もゼロではありません。

最も重要なのは、定期的な医師の診察を受け、適切な指導のもとで治療を継続することです。自己判断での中断は避け、不安や疑問がある場合は必ず主治医に相談してください。

森下駅前クリニックでは、睡眠時無呼吸症候群の診断から治療まで、オンライン診療でサポートしています。「いびきがひどい」「日中の眠気が強い」など、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

経験豊富な呼吸器内科専門医が、一人ひとりの状況に応じた最適な治療法をご提案いたします。CPAP治療中の方の定期フォローアップもオンラインで対応可能です。

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治療

検査

予防

合併症

症状

原因

傾向

疑い

 

 

引用論文

[1] Continuous Positive Airway Pressure – StatPearls – NCBI Bookshelf. 2025.

[2] McArdle N, et al. Long-term use of CPAP therapy for sleep apnea/hypopnea syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 1999;159(4):1108-1114.

[3] Carneiro-Barrera A, et al. Effect of an Interdisciplinary Weight Loss and Lifestyle Intervention on Obstructive Sleep Apnea Severity: The INTERAPNEA Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2022;5(4):e228212.

[4] Georgoulis M, et al. Dose-response relationship between weight loss and improvements in obstructive sleep apnea severity after a diet/lifestyle interventions: Secondary analyses of the “MIMOSA” randomized clinical trial. J Clin Sleep Med. 2022;18(6):1593-1601.

[5] Uvulopalatopharyngoplasty: Overview, Periprocedural Care, Technique. Medscape. 2023.

[6] Friedman M, et al. Clinical predictors of obstructive sleep apnea. Laryngoscope. 1999;109(12):1901-1907.

[7] Kiely JL, et al. Intranasal corticosteroid therapy for obstructive sleep apnoea in patients with co-existing rhinitis. Thorax. 2004;59(1):50-55.

[8] Weaver TE, Grunstein RR. Adherence to Continuous Positive Airway Pressure Therapy: The Challenge to Effective Treatment. Proc Am Thorac Soc. 2008;5(2):173-178.

[9] Kribbs NB, et al. Effects of one night without nasal CPAP treatment on sleep and sleepiness in patients with obstructive sleep apnea. Am Rev Respir Dis. 1993;147(5):1162-1168.

[10] Dodds S, et al. Mortality and morbidity in obstructive sleep apnoea-hypopnoea syndrome: Results from a 30-year prospective cohort study. ERJ Open Res. 2020;6(3):00057-2020.

[11] Koutsourelakis I, et al. Nasal inflammation in sleep apnoea patients using CPAP and effect of heated humidification. Eur Respir J. 2011;37(3):587-594.

[12] Scherer R, et al. A sleep clinician’s guide to runny noses: evaluation and management of chronic rhinosinusitis to improve sleep apnea care in adults. J Clin Sleep Med. 2023;19(6):1163-1176.

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CPAPとBiPAPの違いとは?息苦しさで悩む方へ|専門医が使い分けを解説

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を始めた患者様から「CPAP治療を受けているが息苦しい」「BiPAPという治療法があると聞いたが、違いは何か」といったご質問をいただくことがあります。

森下駅前クリニックでは、呼吸器内科専門医として多くの睡眠時無呼吸症候群患者様の治療を行っており、一人ひとりの症状や病態に最適な治療法をご提案しています。今回は、CPAPとBiPAPの違いについて、医学的根拠に基づいて詳しく解説いたします。

 

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結論:最大の違いは「息を吐くときの圧力」。CPAPは1段階、BiPAPは2段階

まず結論!一目でわかる比較表

項目 CPAP (持続陽圧呼吸療法) BiPAP (二相性陽圧呼吸療法)
圧力設定 1段階(吸う時も吐く時も一定) 2段階(吸う時と吐く時で圧を変更)
例え 常に一定の風が吹くトンネル 呼吸に合わせ追い風・向かい風を調整
息の吐きやすさ 圧に逆らって吐くため苦しいことがある 吐く時の圧を下げられるため楽に吐ける
主な役割 気道の閉塞を防ぐ 気道の閉塞を防ぐ+呼吸の補助

圧力のかかり方の違い

CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、英語で”Continuous Positive Airway Pressure”の略称で、その名の通り持続的に一定の陽圧を気道に供給する治療法です。設定圧力は通常4-20cmH2Oの範囲で、吸気時も呼気時も同じ圧力が維持されます。

一方、BiPAP(二相性陽圧呼吸療法)は”Bilevel Positive Airway Pressure”の略で、吸気時の圧力(IPAP)と呼気時の圧力(EPAP)の2つの圧力レベルを使い分けます。これにより、吸気時はより高い圧力で気道を開き、呼気時は低い圧力にして息を吐きやすくします。

なぜCPAPは息苦しい?BiPAPが適応となるのはどんな人?

CPAPで息苦しさを感じる理由

CPAP療法では呼気時にも一定の陽圧がかかり続けるため、患者は呼気時にこの圧力に逆らって息を吐く必要があります。この呼気抵抗が「息苦しさ」として感じられる主要な原因です。

特に高圧設定が必要な重症睡眠時無呼吸症候群の患者では、この呼気困難感が顕著に現れることが報告されています。

BiPAPへの変更を検討する具体的なケース

大規模データ解析研究により、以下のような場合にBiPAP療法への変更が検討されることが明らかになっています。

・CPAP不耐性(CPAP療法開始90日以内にアドヒアランス(治療継続率)の基準を満たせない患者において、BiPAPへの変更により多くの患者が治療継続基準を満たすことができたと報告されています。)

・中枢性睡眠時無呼吸症候群(中枢性睡眠時無呼吸に対しては、BiPAP-STモードが有効な治療選択肢となります。)

・合併症を有する睡眠時無呼吸症候群(肥満低換気症候群や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併している患者では、BiPAP療法がより適している場合があります。)

・高い治療圧が必要な重症例(高圧CPAP設定時の呼気困難感により治療継続が困難な症例において、BiPAPの呼気圧軽減効果が有用とされています。)

CPAPとBiPAP、それぞれのメリット・デメリットと費用

メリット・デメリット比較

CPAP療法のメリット

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する第一選択治療として確立されている
・装置がシンプルで操作が容易
・携帯用モデルが豊富で旅行時も便利
・BiPAPと比較して費用が安価

CPAP療法のデメリット

・呼気時の圧力抵抗による不快感
・高圧設定時の忍容性の問題
・中枢性睡眠時無呼吸には効果が限定的

BiPAP療法のメリット

・呼気時圧力の軽減により呼吸が楽になる
・複雑な睡眠関連呼吸障害に対応可能
・バックアップレート機能で呼吸補助が可能
・CPAP不耐性患者への有効な代替治療

BiPAP療法のデメリット

・装置がより複雑で設定調整が必要
・CPAP比較で機器費用が高額
・携帯性に劣る場合が多い

費用はどれくらい変わる?

日本の健康保険制度では、睡眠時無呼吸症候群の治療は保険適用となります。CPAP療法では月額約4,000-5,000円の自己負担で治療を受けることができます。BiPAP療法も適応基準を満たした場合には同様に保険適用となります。

月々の維持費用として、マスクやフィルターなどの消耗品、定期的な医師による診察・評価、機器のメンテナンス費用がありますが、これらも保険診療の範囲内で対応可能です。

ただし、BiPAP療法については、CPAP療法で効果不十分または不耐性が認められる場合に限定されることが多く、医師による詳細な評価が必要となります。

CPAPの息苦しさを感じたら…オンライン診療で専門医にご相談を

CPAP治療中に息苦しさや不快感を感じている方は、決して一人で悩まず、まずは専門医にご相談ください。症状や病態に応じて、以下のような対策をご提案できます。

・圧力設定の最適化:現在の設定が適切かどうかの再評価
・マスクフィッティングの改善:エアリークの確認とマスク調整
・機器の変更検討:BiPAPへの変更の適応評価

森下駅前クリニックでは、オンライン診療も行っており、お忙しい方や通院が困難な方でも専門医による診察を受けていただけます。睡眠の質の改善は、生活の質の向上に直結する重要な治療です。

 

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合はオンライン診療へ

睡眠時無呼吸症候群は、放置すると心血管疾患、糖尿病、脳血管障害などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。適切な診断と治療により、これらのリスクを大幅に軽減することができます。

CPAPからBiPAPへの変更が必要かどうかは、詳細な症状の評価と睡眠検査結果の解析が必要です。森下駅前クリニックでは、呼吸器内科専門医として豊富な経験を持つ医師が、患者様一人ひとりの状態に最適な治療法をご提案いたします。

息苦しさや治療への不安を感じている方は、ぜひお気軽にオンライン診療をご利用ください。適切な治療により、質の高い睡眠と健康的な毎日を取り戻すお手伝いをいたします。

 

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引用文献

NCBI Bookshelf. Continuous Positive Airway Pressure – StatPearls. National Center for Biotechnology Information, U.S. National Library of Medicine. PMID: NBK482178.
Pałasiewicz G, Sliwiński P, Hawrylkiewicz I, et al. Acute effects of CPAP and BiPAP breathing on pulmonary haemodynamics in patients with obstructive sleep apnoea. Eur Respir J. 1998;11(4):887-92. PMID: 9510662.
Comfort During Non-invasive Ventilation. Front Med (Lausanne). 2022;9:874122. PMID: 35402465.
Compliance after switching from CPAP to bilevel for patients with non-compliant OSA: big data analysis. BMJ Open Respir Res. 2019;6(1):e000380. PMC: PMC6530496.
CPAP and Bi-level PAP Therapy: New and Established Roles. Proc Am Thorac Soc. 2011;8(4):341-7. PMC: PMC3119924.
A randomised controlled trial of CPAP versus non-invasive ventilation for initial treatment of obesity hypoventilation syndrome. Thorax. 2017;72(5):437-444. PMID: 27852952.
A comparison of continuous and bi-level positive airway pressure non-invasive ventilation in patients with acute cardiogenic pulmonary oedema: a meta-analysis. Eur J Heart Fail. 2006;8(3):279-85. PMID: 16569254.
Interac Network. CPAP Treatment for Sleep Apnea in Japan: A Comprehensive Guide. 2024年3月22日.
Efficacy of continuous positive airway pressure (CPAP) in the prevention of cardiovascular events in patients with obstructive sleep apnea: Systematic review and meta-analysis. J Cardiovasc Med (Hagerstown). 2020;21(4):250-258. PMID: 32248026.

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CPAPとASVの違いとは?適応となる症状や使い分けを専門医が解説

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS)の治療には、主に「CPAP(シーパップ)」と「ASV」という2種類の在宅治療機器が使われます。CPAPは持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure)の略称で、一般的に最も広く用いられる治療法です。一方、ASVは適応補助換気(Adaptive Servo-Ventilation)の略称で、より新しい高度な装置です。

それぞれ名前は聞いたことがあっても、「具体的に何が違うのか?」「自分にはどちらが適しているのか?」と疑問に思われる方も多いでしょう。本記事では、専門医がCPAPとASVの違いや適応疾患、治療の選択基準、さらには治療法の切り替えタイミングや注意点について、最新のエビデンスに基づき丁寧に解説します。

 

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【結論】CPAPとASVの最大の違いは「呼吸サポートの方法」

まず結論から申し上げます。CPAPとASVはいずれも睡眠中の呼吸を補助する装置ですが、最大の違いは「呼吸の支援方法」にあります。

CPAPが一定の空気圧を送り続けて気道の閉塞を防ぐシンプルなサポーターであるのに対し、ASVは呼吸の状態をリアルタイムで感知して圧力を調節し、必要に応じて呼吸そのものを助ける高機能なパートナーです。以下に比較表を示します。

まず結論!一目でわかる比較表

呼吸サポートの方式 CPAP(持続陽圧) ASV(適応補助換気)
送気の仕組み 常に一定の圧力で空気を送り続ける 呼吸ごとにセンサーが呼吸状態を監視し圧力を自動調整
主に防ぐ・補助すること 上気道の閉塞を防ぎ無呼吸を起こさせない 呼吸中枢の弱まりによる無呼吸や低呼吸を補う
主な適応疾患 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)など 中枢性睡眠時無呼吸(心不全のチェーンストークス呼吸等)、CPAPで改善しない複雑な無呼吸例
心不全への使用 心不全合併OSA/CSR患者にも使用可能(症状改善報告あり) 左心機能低下の心不全例(LVEF≦45%)には原則禁忌

CPAPは「気道を広げ続ける」シンプルなサポーター

CPAPは寝ている間に一定の空気圧をマスク経由で喉に送り込み、喉や気道が狭く潰れてしまうのを防ぐ装置です。
エアクッションで気道を“支え続ける”ようなイメージで、常に一定の圧力をかけ続けることで睡眠中の無呼吸発生を抑制します。

閉塞型(閉塞性)睡眠時無呼吸症候群(OSA)では眠っている間に喉の奥が物理的に塞がることが原因で呼吸停止が起こりますが、CPAPはこの上気道の閉塞という問題に対処するシンプルかつ強力な方法です。

OSAに対する第一選択の治療法はまさにCPAPであり、中等症以上のOSA患者さんには真っ先に検討・推奨される標準治療です。

CPAP療法によって無呼吸が改善すると、日中の眠気やいびきが軽減するだけでなく、心疾患や脳卒中などの深刻な合併症リスクも低減することが知られています。
実際、研究によりCPAP使用者は未治療の場合に比べて心臓病や脳卒中、糖尿病のリスクが低く抑えられることが確認されています。

このようにCPAPは「喉を広げ続けることで呼吸を確保する」シンプルなサポーターとして、OSA治療の要となっています。

ASVは「呼吸そのものを助ける」高機能なパートナー

ASVは一言でいうと「患者さんの呼吸に合わせて自動で補助してくれる人工呼吸器」です。

内蔵されたセンサーが一息ごとの呼吸パターンを継続的に監視し、呼吸が止まりそうなときや浅くなったときには自動で圧力サポートを強め、正常に呼吸しているときには圧力を下げるというように、秒単位で送気を調節します。

例えば睡眠中に呼吸の間隔が異常に長く開いたり、呼吸数が極端に減速した場合、ASVは即座に「今、息を送らなければ」と判断して必要な空気を送り込みます。
一方で呼吸が安定している間は送気を弱めたり一時停止するため、過度な換気にならないよう調整されています。

このようにASVは呼吸リズムの乱れ自体を検知して補正できるため、単に気道を広げるだけのCPAPとは異なり「呼吸そのものをバックアップするパートナー」と言えます。
特に、チェーンストークス呼吸(周期的な過呼吸と無呼吸の繰り返し)など中枢性無呼吸では、患者さん自身の呼吸ドライブ(脳からの呼吸指令)が弱くなっているため、ASVのような高度な補助が有効です。

ASVは本来、慢性心不全患者さんの在宅人工呼吸器として開発・利用されてきた経緯があり、その高機能性ゆえにCPAPでは対応しきれない複雑なケースで力を発揮します。
なお、ASVも基本的な装着方法はCPAPと同じくマスクをつけるだけで自動作動し、難しい操作は不要ですが、CPAPに比べ設定調整項目が多く専門的判断を要する機器でもあります。

どのような症状にどちらが使われる?適応疾患の違い

前述のとおり、CPAPとASVはサポートの仕組みが異なるため、それぞれ適応となる症状・疾患も異なります。
ここでは「どんな場合にどちらが使われるのか」を具体的に見てみましょう。

CPAPが第一選択となる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」

CPAPの主な適応は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)です。
OSAは睡眠中に喉や気道が物理的に閉塞してしまうことで呼吸停止(無呼吸)が繰り返される病態で、肥満や顎の構造などによって気道が狭くなりやすい人に起こります。
症状としてはいびき、日中の強い眠気、起床時の頭痛などが典型的です。

このOSAに対し、CPAP療法は世界的に確立された第一選択の治療法です。
中等度以上のOSA患者さんには原則としてCPAP導入が推奨されており、適切な圧力設定のもと毎晩継続使用すれば、多くの場合で睡眠中の無呼吸低呼吸指数(AHI)は正常化し、睡眠の質が改善します。

CPAPによって酸素低下や覚醒反応が減少すれば、前述のように日中の眠気や生活の質(QOL)の向上が期待できるだけでなく、高血圧・心疾患・脳卒中などOSAに伴う長期的な健康リスクの軽減も報告されています。

実際、CPAP治療によりOSA患者の心血管疾患リスクが有意に低下したとの研究結果もあり、睡眠時無呼吸を甘く見ずに適切に治療することが重要です。

ASVが必要となる複雑なケース

ASVは、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)やCPAPでは十分改善しない特殊なケースで検討される治療法です。

CSA(中枢性無呼吸)とは、睡眠中に脳の呼吸中枢からの指令が一時的に低下・消失してしまうことで起こる無呼吸状態を指します。
喉が詰まるOSAと違い、CSAでは気道自体は開通しているのに呼吸の努力(胸やお腹の動き)が止まってしまうのが特徴です。

典型的なCSAの原因としては、慢性心不全に伴うチェーンストークス呼吸(心不全で血中二酸化炭素の変動や循環遅延が起こり呼吸中枢が乱れる)、脳幹部の疾患や脳卒中、重度の腎不全、高地環境、あるいは麻薬性鎮痛薬の服用などが挙げられます。
このような中枢起因の無呼吸は、気道を広げるだけのCPAPでは根本的な解決が難しいため、ASVの出番となります。

ASVは上記のように呼吸そのものを補助できるため、例えば心不全に伴うCSA(チェーンストークス呼吸)をCPAPより効果的に改善できるとの報告があります。

際、心不全患者でOSAとCSAが混在するような場合にCPAPとASVの効果を比較した試験では、ASV使用群の方が治療アドヒアランス(継続使用率)が高く、数ヶ月のうちに心機能(LVEF)や血中BNP値の改善が見られたとの結果も報告されています。

さらに、OSAとCSAが両方存在する複雑な睡眠時無呼吸にもASVが検討されます。

例えばOSA患者さんの中には、CPAP適応後に新たに中枢性無呼吸が出現・残存してしまうケースがあり(複合型睡眠時無呼吸症候群と呼びます)、こうした「CPAPでは無呼吸が取り切れない」場合にASVへ切り替えることで無呼吸の抑制と呼吸パターンの安定化が図れることがあります。

このようにASVは、閉塞性無呼吸にはまずCPAP、それでも難しい場合に登場する治療と位置付けられます。
ただし次に述べるように、ASVを使用する際には満たすべき条件や注意点があります。

【最重要】ASV治療には専門医による慎重な判断が必要

ASVは非常に有用な治療法ですが、どんな患者さんにも安全に使えるわけではない点に注意が必要です。

特に心臓に負荷のかかる治療でもあるため、専門医の管理のもとで適応可否を慎重に判断することが大切です。

心機能が低下した心不全には原則禁忌

心不全で心臓のポンプ機能が低下している患者さん(特に左室駆出率LVEFが45%以下の重症例)には、ASVは原則として使用しません。
これは、大規模臨床試験の結果に基づく重要な安全上の指針です。

2015年に発表された約1300人の慢性心不全患者を対象とした研究(SERVE-HF試験)では、LVEF≤45%の心不全患者に対しASV療法を追加して経過を追いましたが、ASVを使用した群で使用しなかった群に比べて死亡率(特に心臓死)が有意に増加するという予期せぬ結果が示されました。

つまり、心不全が進行して心機能が落ちているような患者さんでは、ASV治療がかえって予後を悪化させる可能性があるのです。

これを受けて、欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓病学会(ACC/AHA)など国際的なガイドラインでも
「LVEFが低下した心不全患者にASVは推奨されない(クラスIII:施行すべきでない)」と明記されました。

日本の循環器学会ガイドライン等においても同様で、現在ASVは「心不全患者のうち左心機能が保たれているケース」でないと基本的に適応できません。

以上より、心不全をお持ちで心機能が低い方に対してはASV治療は禁忌(原則禁止)と心得てください。

ASVは本来、心不全の呼吸障害の改善を期待されて普及しましたが、このエビデンスを踏まえ現在は慎重な扱いが求められています。

治療開始前には必ず心機能の評価を

上記の理由から、ASVを開始する際は事前に心臓の状態評価が不可欠です。
具体的には心エコー検査等で左室駆出率(LVEF)を測定し、重症心不全(LVEFが著しく低下した状態)がないことを確認する必要があります。

また既往歴として心筋梗塞や心不全の診断がある方は、ASVよりもまず心不全そのものの治療最適化が優先されます。

睡眠時無呼吸のタイプによっては、心不全治療を行う中で無呼吸が改善する場合もありますので、総合的な判断が重要です。

ASV療法を担当する医師は、患者さんの心機能や基礎疾患、無呼吸のタイプを総合的に勘案して適応を決定します。

不適切な患者さんにASVを使うことはかえって危険を伴いますので、ASV導入の際には必ず専門医の指導のもと進めるようにしましょう。

 

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CPAPからASVへの切り替えを検討するタイミングとは?

では、現在CPAP治療を行っている方が「ASVに変更した方が良いケース」とはどのような場合でしょうか。

一般に、CPAPを試しても無呼吸・低呼吸が十分に改善しない場合や、CPAP使用中に中枢性無呼吸が目立つような場合が該当します。
具体的には、CPAP導入後もAHI(無呼吸低呼吸指数)が一定値以下に下がらないケースです。

保険適用の基準でも「CPAP施行にもかかわらずAHIが15以下に改善しない場合にASV適応を検討する」とされており、一つの目安になります。

複合型睡眠時無呼吸(CPAP治療中に中枢無呼吸が残存・出現する状態)では、CPAPでは対処困難なためASV切り替えが検討されます。

例えばCPAPをしっかり装着しているのに依然として夜間の酸素低下や睡眠分断が続き、検査で中枢性無呼吸が多数観察されるような場合です。

このような場合、担当医がASVへの変更を提案することがあります。
ただし繰り返しになりますが、ASV適応には心機能のチェックなどクリアすべき条件があります

したがって自己判断で装置を変えることはできません。
CPAPの効果不十分や呼吸パターン異常が疑われる際は、必ず主治医に相談して適切なタイミングでの検討を行ってもらいましょう。

CPAPが合わないと感じたら…オンライン診療でご相談ください

「CPAPを使っているけれどどうも合わない」「しっかり治療しているはずなのに日中の眠気が取れない」など、お困りのことはありませんか。

CPAP治療は効果的とはいえ、毎晩マスクを装着する負担や機器の違和感などから継続が難しく感じる場合もあります。

また人によっては、CPAPで十分気道が開通しているにもかかわらず他の要因で眠気が残ってしまうケースや、副鼻腔炎・鼻づまり等の影響でマスク装着が辛いケースもあります。

治療効果が思わしくないときや機器への不満があるとき、決して「自分には無理だ」と自己判断で中止しないでください

例えばマスクのフィッティング調整や加湿器の使用で装着感が改善したり、設定圧の微調整で効果が向上する可能性があります。
それでも難しい場合には他の治療オプション(マウスピース療法や体位療法、ASV等)の検討余地もあります。

医師やスタッフと相談しながら工夫を重ねることで、解決できる問題は多いものです。
当院では対面診療はもちろん、遠方の方やお忙しい方にはオンライン診療も活用し、患者さんそれぞれに合った睡眠時無呼吸の管理をサポートしております。
C

PAP治療に関するお悩みがある方は、一人で抱え込まずお気軽にご相談ください。

 

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合はオンライン診療へ

「いびきがひどいと言われる」「日中に強い眠気があって集中できない」――これらは睡眠時無呼吸症候群(SAS)の典型的なサインです。

心当たりがある方やSASを指摘された方は、まず専門医による評価を受けることをおすすめします。

当院では睡眠時無呼吸症候群のオンライン診療(検査・診断・CPAP療法等)を実施しております。

遠隔からの相談・問診により必要な検査や治療方針を迅速にご提案可能です。
詳しくは当院ホームページをご覧いただき、ご都合の良いタイミングでご予約ください。
適切な治療によって、いびきや日中の眠気から解放され快適な生活を取り戻すお手伝いをいたします。

お一人で悩まずに、まずはお気軽にオンライン診療をご活用ください。

 

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治療

検査

予防

合併症

症状

原因

傾向

疑い

 

 

参考文献

Sleep Foundation. “ASV Machines: What They Are and How They Work.”
Medscape. “Obstructive Sleep Apnea (OSA) Treatment & Management.”
Medscape. “Obstructive Sleep Apnea (OSA) Treatment & Management – Approach Considerations.”
Cleveland Clinic. “ASV Machine: What It Is, How It Works & Effectiveness.” (Health Library, Last reviewed Dec 25, 2023)
日本循環器学会ほか. 「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン 2023年改訂版」
Cowie MR, Woehrle H, et al. “Adaptive Servo-Ventilation for Central Sleep Apnea in Systolic Heart Failure.” N Engl J Med. 2015; 373(12):1095-1105. (PMID: 26323938)

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CPAP治療の目標AHIは5未満?数値が下がらない原因と改善策を専門医が解説

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対する代表的な治療であるCPAP療法では、「AHI(無呼吸低呼吸指数)」という指標が治療効果を判断する上で重要です。

AHIとは一体何なのか、CPAP使用中はAHIをどの程度まで下げることが目標になるのか。

そして、CPAPをしっかり使っているのにAHIがなかなか下がらない場合に考えられる原因や具体的な改善策について、最新のエビデンスを踏まえて専門医がわかりやすく解説します。

 

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そもそもAHI(無呼吸低呼吸指数)とは?睡眠の質を示す重要な指標

AHI(Apnea Hypopnea Index)とは、睡眠1時間あたりに何回の無呼吸(10秒以上の呼吸停止)や低呼吸(低下した呼吸)が生じたかを表す指数です。

簡単に言えば、睡眠中の呼吸の乱れの頻度を示すもので、この数値が高いほど睡眠の質が損なわれている可能性があります。

AHIは一晩の睡眠ポリグラフ検査で測定され、AHI=(無呼吸+低呼吸の合計)÷睡眠時間(時間)という計算式で求められます。

AHIの値により、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度分類が行われます。
一般的にAHI 5未満が正常範囲(SASではない)とされ、5以上で睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

その上でAHIが5以上15未満なら「軽症」、15以上30未満が「中等症」、30以上は「重症」と定義されています。

例えばAHIが30を超える重症の方では、1時間に30回以上も呼吸が止まったり浅くなったりしていることになり、日中の強い眠気や血中酸素低下による様々な健康リスクが高まります。

なお、CPAP装置には使用中のAHIを記録・表示する機能が備わっており、CPAP療法中のAHIはその治療効果を測る一つのバロメーターになります。
CPAP適応前の検査でAHIが高かった方でも、CPAPを毎晩適切に使用することでこの数値が大幅に下がります。

AHIがしっかり低下していれば、「空気の圧力で気道が十分に開いて確保され、無呼吸や低呼吸がほとんど防げている」ことを意味します。

一方、CPAP使用時のAHIが高いままの場合は、治療が不十分な可能性があります。
正常成人のAHIは5未満ですので、CPAPによって少なくとも5未満の値に抑えられることが理想です。

CPAP治療におけるAHIの目標値は「5未満」が目安

CPAP治療中のAHI目標値は一般的に5未満が目安とされています。
AHI 5未満であれば正常範囲内であり、睡眠時無呼吸症候群としては十分にコントロールされた状態と判断できます。

実際、CPAP治療を受ける成人ではAHIを5未満に抑えることが一つのゴールになります。
AHIが5未満まで下がれば、多くの方で日中の眠気や倦怠感など症状の改善が期待できるほか、無呼吸による長期的な合併症リスクも軽減できると考えられます。

ただしAHIの目標値は一律ではなく、年齢や体調、もとの重症度によって若干異なる場合があります。

例えば重症OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)の患者さんでは、CPAP導入前はAHIが数十以上と極めて高値であることもあります。

そのような場合、CPAP治療によってAHIが劇的に低下しても、わずかに5を上回る程度の軽症レベルが残ることがあります。

このような患者さんでは症状が十分改善し日中にすっきり過ごせるのであれば、厳密にAHI<5に達していなくても容認されることがあります。

また高齢者や持病のある方では、副作用を避けるためCPAPの圧力設定に上限がある場合もあり、無理にAHIをゼロ近くまで下げることより患者さん個々にとってバランスの良い目標値を設定することが大切です。

いずれにせよ、最終的なAHI目標は担当医と相談の上で決めることになります。
多くの方は治療前より大幅にAHIが下がり、症状や健康状態が改善するレベルまで減少します。

要注意!CPAPを使ってもAHIが下がらない・高いままの主な原因7選

マスクからの空気漏れ(リーク)

CPAPマスクのフィットが悪かったり、古くなって劣化したマスクを使用していると、睡眠中にマスクと顔の隙間から空気が漏れることがあります。必要な空気圧が気道に十分届かないため、気道の開存性が保てず無呼吸・低呼吸が残存してしまい、AHIが高止まりする原因になります。

リークはCPAP治療のつまずきとして非常に一般的で、就寝中に自覚なく起こり得ます。
メーカーのデータによれば、マスク漏れの主な原因は「マスクのサイズ・装着の不適合」「汚れの付着」「口からの空気漏れ」の3つとされています。
まずはマスクを正しい位置に装着しストラップを調整することで、空気漏れが最小になるよう確認しましょう。

長期間使ったマスクはクッション部がへたって密閉性が落ちますので、定期的な交換も大切です。

また就寝中の体位変換でマスクがずれて漏れが生じることもあります。漏れが多い夜はCPAP装置のAHI計測も精度が落ちる可能性が指摘されています。
マスクからの空気漏れを防ぐことがAHI低下の第一歩です。

マスクの種類が合っていない

CPAPマスクには鼻だけを覆う「鼻マスク」や鼻孔に差し込む「ピローマスク」、口と鼻を両方覆う「フルフェイスマスク」などがあります。

患者さんの顔の形や呼吸の癖によって適したマスクは異なります。

自分に合わないタイプのマスクを使っていると、装着感の悪さから空気漏れが生じやすかったり、必要とする空気圧が高くなりがちです。

実際、フルフェイスマスクは鼻マスクに比べて治療効果がやや劣る可能性が指摘されています。

マスクの種類によって治療成績に差が出るため、現在のマスクが合わないと感じる場合は別タイプを試す価値があります。

口呼吸になっている(鼻マスク・ピローマスクの場合)

鼻のみを覆うタイプのマスク(鼻マスクやピローマスク)を使用中の方に多い原因です。
就寝中に口が開いて口呼吸になると、CPAPで送られた空気が口から漏れてしまい、気道内圧が保てなくなります。

その結果、無呼吸・低呼吸が十分防げずAHIが高めに残ってしまいます。
鼻マスク装着中に口呼吸になると、朝起きた時に口や喉が乾燥していることが多く、これが一つのサインです。

対策としては、あごベルトを使用して睡眠中に口が開かないよう軽く固定する方法があります。

また、口呼吸自体を防ぐ根本策として、日中から鼻呼吸を意識するトレーニングや、就寝前に鼻腔をスプレーや洗浄で清潔に保つことも有効です。

どうしても口呼吸が治らない場合は、フルフェイスマスクへの変更も検討しましょう(口と鼻の両方に空気が送られるため、口が開いても治療効果が落ちにくくなります)。

設定圧が不適切

CPAP装置の空気圧(陽圧)の設定が、その人にとって適切でない場合もAHIが下がらない原因になります。

圧力が低すぎれば気道を十分に開くことができず、一部の無呼吸や低呼吸が残存します。
特にCPAP導入後に体重増加や上気道の状態悪化があった場合、当初の圧力では足りなくなることがあります。

逆に圧力が高すぎる場合、必要以上の不快感を生じて睡眠を妨げたり、過換気による中枢性無呼吸を誘発してしまうことがあります。

機種によっては自動調節式(APAP)のCPAPもあり、必要圧が変動する方には有用ですが、それでも合わない場合は再度専門医に相談して設定圧の見直しが必要です。

体重の増加

体重増加(肥満の進行)は睡眠時無呼吸を悪化させる大きな要因です。
首周りや舌の脂肪沈着によって気道が狭くなり、無呼吸が起こりやすくなります。

CPAP治療中でも、体重が増えると以前より高い空気圧が必要になる場合があり、設定を変えていなければAHIが悪化することがあります。

10%の体重増加によりAHIが約32%も増加したとの研究報告があります。
逆に言えば、体重を減らすことでAHIを下げられる可能性があります。

CPAPを始めた後に体重が増えてしまったという方は、治療効果維持のためにも生活習慣を見直し、減量に取り組むことが重要です。

飲酒・喫煙・睡眠薬

アルコールの摂取や一部の薬剤(睡眠導入剤や麻酔薬)は筋肉を弛緩させ、睡眠中の気道をより塞ぎやすくします。

また脳の呼吸中枢も抑制されるため、無呼吸に対する体の覚醒反応が鈍くなり、呼吸停止が長引く傾向があります。

その結果、普段よりAHIが上昇してしまうことが知られています。

喫煙もまた、咽頭や鼻粘膜の炎症・腫脹を引き起こし気道抵抗を増やすため、無呼吸悪化の一因となります。

以上より、就寝前の飲酒や過度の喫煙、必要以上の睡眠薬使用は避けることが望ましく、CPAP治療中のAHIを下げるためには生活習慣の改善が重要です。

中枢性無呼吸(CSA)の出現

CPAP治療によって閉塞性の無呼吸は改善しても、代わりに中枢性無呼吸が生じてAHIが下がりきらないケースがあります。

これは「治療により気道は確保されたが、脳の呼吸中枢から呼吸の指令が一時的に止まってしまう」現象で、治療に誘発された中枢性無呼吸(Complex Sleep Apnea)とも呼ばれます。

CPAP開始直後の患者さんの2〜20%程度にこの中枢性無呼吸の出現が認められていますが、多くは数週間〜数ヶ月の経過で消失します。

一部の患者さんでは持続することがあります。

中枢性無呼吸はCPAPの空気圧設定が高すぎる場合や低すぎる場合にも誘発されやすいことが知られており、原因4で述べた圧設定不適と関連することもあります。
このような睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、通常のCPAPでは対処が難しいため専門的対応が必要です。
具体的には圧力設定の微調整や高度な自発呼吸同調技術を持つASV装置への変更などが検討されます。
中枢性無呼吸が原因の場合、ご自身で判断するのは難しいため、早めに主治医に相談しましょう。

以上、CPAP使用中にAHIが下がらない主な原因7つを挙げました。該当するものがあれば次章の対策を講じることで改善する可能性があります。

専門医が教えるAHIを改善するための具体的な対策

まずはセルフチェック!自分でできる改善策

AHIが思うように下がらない場合、まずはご自身で以下のポイントをセルフチェックしてみましょう。日々のCPAP療法の質を高めることで、AHI改善につながる可能性があります。

マスクのフィッティングを見直す

就寝前にマスクを正しく装着できているか確認しましょう。鏡を見ながら位置合わせし、ストラップの緩みや歪みがないよう調整します。
空気を出した状態で手を当て、漏れがないか確かめてみてください。
必要に応じてマスククッションの交換やストラップの劣化チェックも行います。
適切にフィットしたマスクは空気漏れを最小限にし、AHI低下に直結します。

ご自身に合ったマスクタイプを選ぶ

現在お使いのマスクがどうにも合わない場合、思い切って別のタイプのマスクを試すことも検討しましょう。

例えば鼻マスクでどうしても口呼吸になる方はフルフェイスマスクに変更する、逆にフルフェイスで漏れが多い方は鼻マスク+あごベルトに挑戦する、といった方法です。
一般に鼻マスクやピローマスクは装着感が軽くリークも少ない傾向があります。
可能であれば鼻呼吸のトレーニングをしつつ、軽量な鼻マスクで治療するのが望ましいでしょう。

反対に重度の鼻閉がある方は無理に鼻マスクに固執せず、口も使えるフルフェイス型で確実に気道を開通させるほうが効果的な場合もあります。
睡眠専門クリニックでは様々な種類のマスクを試着できるところもありますので、遠慮なく相談してください。

口呼吸への対策を講じる

鼻マスク使用中の方は口テープやあごベルトを活用してみましょう。
市販の口閉じテープや顎支持バンドを使うことで、睡眠中の不顕性の口開きをかなり防ぐことができます。

特に「朝喉がカラカラ」「CPAP中もいびきを指摘される」という方には有効です。
また就寝前の鼻ケアも重要です。鼻炎がある方は寝る前に点鼻薬で鼻腔を開通させ、湿度設定付きCPAPなら適切な湿度を保つことで鼻づまりを減らせます。
鼻がしっかり通れば口呼吸も起こりにくくなり、一晩中CPAPの効果が発揮されやすくなります。

生活習慣を見直す

AHI改善のためには生活習慣の是正も欠かせません。
特に寝酒(就寝前の飲酒)は睡眠の質を下げ無呼吸を悪化させますし、喫煙習慣も長期的に見てSASのリスク要因です。
睡眠薬も必要最低限の量にとどめ、可能であれば主治医と相談の上減薬を検討してください。
夜間のカフェイン摂取も避け、規則正しい睡眠習慣を心がけることがCPAP治療効果を高めます。
これらの取り組みは地味に思えますが、継続すればAHIや日中症状の改善につながる可能性があります。

体重管理(減量)に努める

前述のように肥満と無呼吸の程度は密接に関連しています。
CPAP治療中であっても、体重が減ればAHIがさらに下がり、逆に増えればAHIが悪化する傾向があります。
ぜひ食事療法や適度な運動によって体重管理を行いましょう。
10%の減量でもAHIが約26%改善するとの研究結果があります。
CPAPは根本治療ではなく対症療法ですので、肥満が原因の場合は減量こそが根治への近道です。
主治医や栄養士のサポートを受けながら無理なく減量計画を立てましょう。

CPAPの使用状況を再確認する

基本的なことですが、CPAPを毎晩できるだけ長時間使用することも大切です。
1晩あたり4時間以上、可能なら就寝から起床まで装着し続けることで最大の効果が得られます。
装着を怠った時間帯には無呼吸が再発してしまうため、たとえ昼寝でもCPAPを使うことが推奨されます。
CPAPの装着感がどうしても辛い場合は無理せず専門医に相談し、機種の変更や加湿器の導入など快適性向上の工夫をしてもらいましょう。

以上のセルフチェック・対策を実践することで、多くの方はAHIの改善が期待できます。
特にマスク装着の工夫と生活習慣の改善は効果が大きいので、できる範囲から取り組んでみてください。

セルフチェックで改善しない場合は、すぐに専門医へ相談を

上記の対策を講じてもなおAHIが高値で推移する場合や、自分では原因が特定できない場合は、できるだけ早めに主治医(睡眠専門医)へ相談しましょう。

医師はCPAP装置に記録された詳細データ(AHIの内訳、漏れ量、いびき指数、脈拍や呼吸パターンなど)を解析し、問題点に応じた適切な処置を行います。

例えば残存する無呼吸が閉塞性であれば圧力設定の増加やマスク再調整を検討しますし、中枢性イベントが多ければ圧力の再調節や高度なPAP装置(BiPAPやASV)の適応を判断します。

機器の不具合が疑われる場合はメーカーと連携し、装置交換や設定変更を行うこともあります。

また患者さん自身が気付かないCPAP使用上の問題(例えば無意識に夜間マスクを外してしまっている、など)が潜んでいないか問診で確認し、必要に応じて対策を助言します。

特にAHIが10以上といった中等度以上の残存無呼吸が続く場合や、AHIは低いのに症状が改善しない場合は注意が必要です。

何らかの見落としや別の睡眠障害(例:周期性四肢運動、睡眠不足症候群など)が併存している可能性もあります。

自己判断せず、専門医の評価を仰ぐことで、安全かつ効果的な治療へ軌道修正できます。
CPAP療法は機械相手の治療ですが、医師との二人三脚で調整を重ねていくことが成功の鍵です。

不安な点があれば些細なことでも遠慮なく医師に相談してください。

AHIの改善にはオンライン診療が効果的

AHIを適切に改善していくためには、定期的なフォローアップと迅速な対応が重要です。
そこで活用したいのがオンライン診療(遠隔医療)です。

オンライン診療を利用すれば、自宅にいながら専門医の診察やアドバイスを受けることができ、CPAP治療の質を維持・向上させるのに役立ちます。

特に最近のCPAP装置は通信機能やクラウド記録を備えているものも多く、医師が遠隔で患者さんのAHIや装着時間、リーク量などのデータを把握できます。

これにより、異常の早期発見と迅速な対策が可能です。
例えば「ここ数日AHIが上がっている」「リークが増えている」といった変化にも気付けます。

実際、オンラインによるCPAP患者支援の有効性は研究でも示されています。
複数のランダム化比較試験をまとめたメタ分析では、遠隔モニタリングやオンライン指導を行ったグループでは従来型フォローに比べてCPAPの平均使用時間が1日あたり約30分延長し、4時間以上の使用継続率も有意に向上しました。
わずかな差に思えますが、長期的には睡眠の質や合併症リスクに影響し得る貴重な延長です。
CPAP療法は「どれだけ毎晩使えるか」が成果に直結しますので、オンライン診療によって患者さんのモチベーション維持や不安解消を図り、結果的にAHIのさらなる低減につなげることが期待できます。

さらにオンライン診療であれば通院の手間が省け、悪天候や体調不良の日でも自宅から安全に受診できます。
対面診察では伝えにくい些細な悩みも、ビデオ通話越しならリラックスして相談できるという声もあります。
こうした利便性の高さも継続治療には大切な要素です。
CPAP治療は長期戦ですから、「困った時にすぐ相談できる」環境があること自体が患者さんの安心感につながり、治療継続率アップ→AHI改善につながるのです。

このようにオンライン診療はAHIの改善・管理にとって有力な手段です。
特にお忙しい方や通院が難しい方でも、オンラインなら隙間時間に専門医のフォローを受けられます。
遠隔でも医師と二人三脚のサポート体制を築き、CPAP療法を最大限に活用していきましょう。

 

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遠方の方や多忙な方でもご自宅から専門医の診察を受けられ、必要に応じて簡易検査の手配やCPAP導入までスムーズにサポートいたします。

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放置された無呼吸は体に大きな負担をかけます。

早期発見・早期治療で、いびきのない快適な睡眠と健康な日中生活を取り戻しましょう。

 

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原因

傾向

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参考文献:

Cleveland Clinic: “Apnea-Hypopnea Index (AHI): What It Is & Ranges.” Cleveland Clinic Health Library.
ResMed公式ブログ: “Why does my apnea–hypopnea index (AHI) change?” (19 Nov 2024).
Gonçalves MAほか. “Comparing CPAP masks during initial titration for OSA: one-year experience.” Braz J Otorhinolaryngol. 2022;88(S5):suppl5: (doi: 10.1016/j.bjorl.2021.10.007)
Peppard PE et al. “Longitudinal study of moderate weight change and sleep-disordered breathing.” JAMA. 2000;284(23):3015-21.
Kolla BP et al. “The Impact of Alcohol on Breathing Parameters during Sleep: A Systematic Review and Meta-analysis.” Sleep Med Rev. 2018 Dec;42:59-67.
Javaheri S, Smith J, Chung E. “The prevalence and natural history of complex sleep apnea.” J Clin Sleep Med. 2009;5(3):205-211.
Labarca G et al. “Telemedicine interventions for CPAP adherence in obstructive sleep apnea patients: Systematic review and meta-analysis.” Sleep Med Rev. 2021;60:101543.

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