CPAP(シーパップ、持続陽圧呼吸療法)は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の標準的な治療法です。
しかし、長期間の使用において「CPAPをやめたい」と感じる患者さんも少なくありません。
マスクの不快感や副作用、治療の手間などから途中で自己判断で中止したくなることもあるでしょう。
ただし、CPAPを自己判断で中断することは危険です。本記事では、CPAP治療をやめたくなる理由、その際に懸念されるリスク、安全な対処法や他の治療法について、最新エビデンスを交えながらわかりやすく解説します。
最後に、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合に当院のオンライン診療を活用する方法もご紹介します。
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なぜ「CPAPやめたい」と感じるのか
CPAP治療には大きな効果がありますが、一方で日々使用する中で様々な不満や負担を感じることがあります。
その結果、治療継続が難しくなり「やめたい」と感じる主な理由には以下のようなものがあります。
マスクの装着が不快で眠れない
鼻や口に装着するCPAPマスクに圧迫感を覚え、異物感で眠りにくいことがあります。
特に慣れないうちはマスクが邪魔に感じてしまい、不眠の原因になることもあります。
また、閉所恐怖感からマスク着用自体に強い抵抗を示す患者さんもいます。
このような装着感の不快さはCPAP治療中止の大きな原因の一つです。
実際、CPAP導入初日から使用を拒否してしまう患者さんは全体の8~15%にのぼり、治療開始1年以内に半数近くが継続できなくなるとの報告もあります【1】。
空気の圧が強くて苦しい
CPAPは気道に陽圧を送り続けるため、設定圧が高いと「息が押し込まれる」ような違和感や苦しさを感じることがあります。
特に重症のSASでは高めの圧力が必要な場合があり、その圧力に慣れるまでは眠りにくさを感じることがあります。
呼気時に空気を吐き出しにくいと感じたり、お腹に空気が溜まって張ってしまう(空気嚥下症状)ケースもあります。
このような圧迫感から、「CPAPを使うと余計に眠れない」と感じてやめたくなることがあります。
鼻づまり・乾燥・肌荒れなどの副作用
CPAPから送られる空気によって鼻や喉が乾燥したり、鼻詰まりが悪化することがあります。
またマスク内から空気が漏れて目や肌に当たると、目の乾燥や顔の肌荒れの原因にもなります。
マスクや頭部固定バンドの圧迫による皮膚の発赤・圧痕ができることもあります。こうした副作用がつらい場合、CPAP治療への意欲が低下してしまいます。
加湿器の併用などで緩和できる場合もありますが、それでも症状が続くと「もうやめたい」と感じる一因になります。
器具の手入れや持ち運びが面倒
CPAP装置の日々の手入れ(マスクやホースの洗浄・乾燥など)や、出張・旅行時の持ち運びを負担に感じる患者さんもいます。
CPAP機器は決して小さくはないため、外泊の度に持って行くのは手間ですし、人前で使用することへの抵抗感(周囲の目が気になる、不恰好に感じるなど)もストレスになります。
こうした煩雑さから「生活の質が下がる」と考え、治療中断を考えてしまうことがあります。
効果を感じられないときの不安
CPAPを使用していても、すぐには症状の劇的な改善を実感できない場合もあります。
本来CPAPは使用初日からいびきや日中の眠気が改善する即効性が期待できますが、人によっては効果実感に時間がかかったり、そもそも重度の眠気症状がなかったケースでは「あまり変わらない」と感じてしまうことがあります。
また、CPAPで無呼吸自体は防げていても疲労感が抜けない場合、「本当に意味があるのか?」と不安になることもあります。
効果への疑問や期待外れ感からモチベーションが下がり、中止したくなることがあります。
治療期間が長い
睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP治療は根本的な治療(完治療法)ではなく、症状を抑える対症療法です。
そのため、基本的には一生涯にわたって毎晩続ける必要があるとされています【2】。
この「治療のゴールが見えにくい」点に不安や負担を感じ、「いつまで続くのか」「ずっとこの生活は嫌だ」と思ってしまう患者さんもいます。
特に症状が軽減してくると「もう治ったのでは?」と自己判断し、中断を考えてしまうケースもあります。
しかし、多くの場合、CPAPをやめてしまうと症状が再燃してしまうため注意が必要です。
以上のように、CPAPをやめたくなる理由は多岐にわたります。
事実、CPAP治療の長期継続率は決して高くなく、治療開始から1年以上しっかり使用を続けている患者さんは半数程度と報告されています【1】。
しかし、こうした問題点には解決策もあります。
次章で述べる対策を試みることで、CPAPの不快感を減らし治療を継続できる可能性があります。
また、どうしてもCPAPが合わない場合には他の治療法への切り替えも検討できます。大切なのは、勝手に中止せずに主治医と相談しながら対策を講じることです。
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CPAPをやめるとどうなる?
「もうCPAPをやめたい」と思って自己判断で治療を中断してしまうと、睡眠時無呼吸そのものは治っていないため様々な悪影響が再び現れるリスクがあります。
CPAPを中止した場合に起こり得る代表的な事柄を見てみましょう。
無呼吸症候群の症状が再発する可能性
CPAPによって空気の通り道(上気道)が保たれている間は無呼吸や低呼吸が防がれています。
しかしCPAPをやめてしまえば、再び睡眠中に気道が塞がり無呼吸状態が繰り返されるようになります。
CPAP中止後わずか数日で、無呼吸低呼吸指数(AHI)が元の重症レベルまで急速に悪化したとの報告があります【3】。
つまり、治療により抑えられていたいびきや無呼吸発作、断続的な覚醒といった症状がすぐに戻ってきてしまう恐れがあります。
また、それに伴い日中の強い眠気や倦怠感といった症状も再発することが確認されています【3】。
CPAPでせっかく改善した睡眠の質が低下し、再び熟睡感のない状態に逆戻りしてしまう可能性が高いのです。
高血圧・心筋梗塞・脳卒中などリスク増加
睡眠時無呼吸症候群を未治療のまま放置すると、高血圧や心血管疾患・脳血管疾患のリスクが高まることが知られています【2】。
無呼吸による低酸素と覚醒反応のたびに交感神経が過剰に働き、慢性的な高血圧を招いたり、血管内皮機能が損なわれ動脈硬化が進行すると考えられています【2】。
実際に、重症SAS患者を10年間追跡した海外研究では、CPAP非使用の群で心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクが有意に高かったとの報告があります【4】。
CPAP治療中はこれらリスクが抑えられていたとしても、中止すれば再び高リスク状態にさらされます。
またCPAP中断からわずか2週間で、朝の血圧が平均で8mmHg程度上昇したとの研究結果もあり【3】、短期間でも血圧・心拍数など心血管系への負担が増大することが示唆されています。
CPAPを勝手にやめることは、将来的な高血圧や心筋梗塞、脳卒中の発症リスクを再び上昇させてしまう点に十分な注意が必要です。
日中の眠気・集中力低下が戻る恐れ
SASによる睡眠の質低下は、日中の強い眠気や集中力の低下を引き起こし、仕事中のミスや居眠り運転など重大な影響を及ぼします。
CPAP治療により多くの患者さんで日中の眠気は改善します。
しかしCPAP中止後は、また夜間に何度も無呼吸で目覚める断片的な睡眠に戻ってしまうため、日中の眠気が再発し活動能力が低下する可能性があります【3】。
特に長距離運転をする方は居眠り事故のリスクが高まりますし、仕事中の注意力低下はご自身のみならず他者の安全にも関わります。
CPAPを中断したことで「最近また日中に強い眠気が出てきた」「集中力が続かずミスが増えた」と感じる場合、無呼吸症状が戻ってきている可能性が高く危険です。
このように、CPAPをやめてしまうと睡眠時無呼吸症候群による様々な悪影響が再び顕在化する恐れがあります。
症状の再燃だけでなく、放置することで高血圧や心臓病・脳卒中など命に関わる合併症リスクも高まります【2】【4】。
一方で、適切にCPAP治療を継続できればこれらのリスクを抑制できる可能性があります。
最近発表されたメタ分析(複数の臨床試験データを統合した解析)では、CPAPを毎日4時間以上しっかり使用できている患者では、心筋梗塞や脳卒中など重大な心血管イベントの再発リスクが有意に低下したことが示されています【5】。
このことからも、自己判断でCPAPを中止せず、できる限り治療を継続・継守することが健康長期予後のために重要であるといえます【5】。
CPAPをやめたいときの解決策
どうしても「CPAPを続けるのがつらい、やめたい」と感じた場合でも、すぐに治療を中止するのではなく、まずは主治医に相談して対策を考えることが大切です。
CPAP治療の不快感や副作用にはいくつか解決策・工夫があります。
マスク装着方法の工夫
マスクが合わずに不快な場合は、自分に合ったタイプのマスクに変更することで改善する可能性があります。
CPAPマスクには、鼻だけ覆う「鼻マスク(ネーザルタイプ)」、鼻孔に差し込む「ピロータイプ」、口と鼻を両方覆う「フルフェイスタイプ」など様々な種類があります。
例えば口呼吸が強い方にはフルフェイス型が合いますし、閉所感が苦手な方には鼻孔に差し込む小型のピロータイプが向いている場合があります。
また、マスクと顔の隙間から空気漏れがあると乾燥や目の刺激になりますので、サイズの合ったマスクを選びフィッティングを調整することも重要です。
就寝時の違和感を減らす工夫としては、頭のベルト位置を調整したり、額当てパッドやマスククッションを柔らかい素材に変える方法もあります。
これらの装着工夫によって、マスクの不快感が軽減すれば治療継続が楽になるでしょう。
加湿器の併用
空気による鼻や喉の乾燥、鼻づまりにはCPAP装置の加温加湿器を利用することが有効です。
加湿機能付きのCPAPなら、送気に湿度と温かさを加えることで気道粘膜の乾燥を防ぎ、鼻閉や喉の違和感を軽減できます。
もしお使いのCPAPに加湿オプションがなければ、外付けの加湿器ユニットを追加することもできます。
特に冬場や乾燥した環境で症状が強い場合、適切な湿度設定を行うことでかなり改善するケースもあります。
また、鼻づまりがひどい時には就寝前に点鼻薬(鼻炎スプレー)を使ったり、鼻腔を洗浄するといった対策も有効です。
鼻呼吸を確保する工夫をすることでCPAPの使用感が向上し、「苦しい」「つらい」という思いが和らぐでしょう。
圧力設定の見直し
「空気の圧が苦しい」という場合には、CPAP装置の圧力設定を再評価してもらうことも大切です。
睡眠検査時に決めた最適圧力が、体調や体重変化によって過剰になっている可能性もあります。
必要最低限の圧力で無呼吸を防げるよう設定を調整すれば、不必要に高い圧による不快感を減らせます。
また最近ではオートCPAP(自動調節式CPAP)といって、一晩の中で必要に応じて圧力を自動調整してくれる機種もあります。
オートCPAPなら無呼吸が起きている時だけ圧を上げ、それ以外の安定している時は低めの圧で維持してくれるため、平均的な負担が減ります。
機種変更や圧の再設定については自己判断できませんので、必ず担当医に相談してください。
適切な圧力に再チューニングすることで、「圧が強すぎて苦しい」という問題が解決する可能性があります。
医師に相談して調整・サポートを受ける
CPAPをやめたくなるほどお困りの場合、まず主治医にその旨を率直に伝えましょう。
医師側も患者さんがどんなことでつらさを感じているかを知ることが改善策検討の第一歩です。
マスクの種類変更や圧力設定調整は前述の通りですが、他にも使用方法の再指導によって改善するケースもあります。
例えば寝る前の装着手順を見直したり、就寝前リラックス法のアドバイス、CPAP装着時の姿勢の工夫(横向きで枕を調整する等)も有用です。
CPAP機器の定期メンテナンス(フィルターやホースの交換状況など)も確認してもらいましょう。
また、CPAP治療経験の長い患者さんのサポートグループや当院のような遠隔モニタリングシステムの活用も、継続を後押ししてくれます【1】。
医師や専門スタッフに相談すれば、様々な角度から解決策を提案してもらえます。一人で悩まず、遠慮なく相談することが大切です。
一時的な中断も自己判断せず必ず医師と相談
旅行や入院などで「数日だけCPAPを中断したい」と思うこともあるでしょう。
短期間であっても自己判断でCPAPを止めるのは避け、必ず事前に医師に相談してください。
中断期間中の代替策(例えば旅行中だけ使える簡易の携帯用CPAPや、どうしても使えない場合の注意点など)についてアドバイスを受けられます。
特にCPAPを付けずに寝るときは体位に気を付ける(極力横向きで寝る)など最低限の対策が必要です。
また、一度中断するとそのままやめてしまいたくなる心理も働きますので、医師と「いつから再開するか」を決めておくことも重要です。
CPAP中断はリスクを伴うため、自己判断で「今夜はサボろう」とせず、計画的に対応しましょう。
以上のように、CPAP治療を続ける上での工夫やサポート体制は色々あります。
大切なのは、「つらい→やめる」ではなく「つらい→相談・対策」という姿勢です。
医療者と二人三脚で問題点を一つずつ解決していけば、CPAPとうまく付き合える可能性があります。
それでもどうしても難しい場合、次の章で述べるようなCPAP以外の治療法を検討する選択肢もあります。
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CPAP以外の治療方法はある?
「どうしてもCPAPは合わない」「別の治療法でなんとかならないか」と感じる方もいるでしょう。睡眠時無呼吸症候群の治療法はCPAP以外にもいくつか存在します。
患者さんの症状の程度や原因によっては、別の方法で症状改善が期待できるケースもあります。それぞれの治療法の特徴を見てみましょう。
マウスピース治療(口腔内装置)
軽症~中等症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対しては、マウスピース(下顎前方器具)による治療が選択肢になります。
この装置は就寝時に歯にはめて下顎を前方に固定し、喉の気道を広げて無呼吸を軽減するものです。
CPAPと異なり機械や電源が不要で小型かつ持ち運びが容易な点が利点です。
旅行先でも使いやすく、装着中もCPAPマスクより違和感が少ないため生活への負担が小さい治療法です【2】。
一方で、重症(AHI30以上)では効果不十分なことが多く、あくまで軽症~中等症向けです。
また、歯科での型取りが必要であり、歯が20本以上残存している方でないと作製できません。
副作用として顎関節の痛みや歯の動き(噛み合わせ変化)が生じる可能性もあります。
効果の程度については個人差がありますが、いびきや日中の眠気に関してはCPAPと同程度に改善したとの報告もあり【6】、CPAPがどうしても合わない中等症程度の患者さんには有力な代替治療となります【6】。
保険適用で作製でき、費用は自己負担3割でおよそ1〜1.5万円程度(一回きり)です。
ただしマウスピース自体は数年ごとに作り直しが必要になることがあります。
当院でも診断後に適応があれば歯科口腔外科に紹介し、マウスピース治療への移行をサポートしています。
外科的手術による治療
睡眠時無呼吸の原因が扁桃肥大や鼻中隔の湾曲など局所的な気道狭窄にある場合、それらを取り除く外科的手術によって根本的な改善が期待できることがあります。
例えば扁桃腺が極度に大きいお子さんのOSAでは扁桃摘出手術で治癒するケースがありますし、鼻詰まりが重度の方では鼻中隔矯正や鼻腔拡大の手術で症状軽減が見込めます。
成人のOSAに対する代表的な手術は、のどの軟口蓋や扁桃周囲を切除・縫縮する口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)や、下顎を前方に移動させる顎骨手術(顎矯正手術)などがあります【2】。
手術の最大のメリットは、成功すれば毎晩の機械装着なしで眠れるようになる(根治が期待できる)点です。
ただしデメリットとして、全身麻酔下での手術リスクや術後の痛み・入院が必要になること、体への負担が大きいことが挙げられます。
また必ずしも手術でOSAが完治するとは限らず、術後に再発して結局CPAPに戻るケースもあります。
費用は手術の種類によりますが、保険適用3割負担で入院費込みで約5~30万円程度が目安です。
根本治療として魅力的ではありますが、誰もが受けられるわけではなく、適応となるのは「明らかな狭窄の原因がある場合」や「CPAPやマウスピースがどうしても困難な場合」などに限られます【2】。
当院でも耳鼻咽喉科専門医と連携し、必要と判断される場合は手術可能な医療機関にご紹介しています。
体重管理・生活習慣の改善: 肥満がある方のSASでは、減量による症状改善が非常に重要かつ有効です【2】。
首周りや咽頭周囲の脂肪が減ることで気道が広がり、無呼吸の頻度が大幅に減少することが期待できます。
実際、体重を約10kg減らすことで無呼吸低呼吸指数(AHI)が平均で約20%以上改善したとの研究報告もあります【7】。
特に軽症~中等症の方では、適切なダイエットでSASが完治または大幅に軽減し、CPAPが不要になるケースもあります【7】。
減量以外にも、睡眠時無呼吸症候群の悪化因子となる飲酒や喫煙の控制、十分な睡眠時間の確保、鼻炎の治療など生活習慣の見直しは、症状緩和と健康増進に欠かせません【2】。
生活習慣の改善は薬や機器に頼らない根本的アプローチであり、高血圧や糖尿病など合併症のリスクもまとめて下げられる点で大きなメリットがあります【2】。
ただし効果が出るまでに時間がかかり、継続的な努力が必要というデメリットもあります。
中等症以上のSASでは生活習慣改善「だけ」では不十分なことも多いため、CPAPなど他の治療と並行して行うのが現実的です。
それでも、減量に成功すればCPAPを卒業できる可能性もありますので、根気強く取り組む価値は大いにあります。
横向き寝などの体位療法
睡眠時無呼吸は仰向けで寝たときに特に悪化しやすい傾向があります。重力で舌や顎が喉の奥に落ち込み、気道を塞ぎやすいためです。
横向きで寝る(側臥位)習慣をつけるだけでも、仰向け時の無呼吸が軽減する場合があります。
これを利用した体位療法として、寝るときに専用の体位矯正用具(背中に着けるポジショントレーナーやリュックのような枕)を装着し、無意識に仰向けにならないよう工夫する方法があります。
市販の抱き枕や、リュックにタオルを詰めて背負って寝るといった簡易な方法で代用する人もいます。
体位療法は軽症の体位依存性SAS(仰向け時のみ無呼吸が多いタイプ)に有効ですが、重症の方や体位に関係なく無呼吸が出る方には効果が限定的です。
あくまで補助的な位置づけにはなりますが、「できるだけ横向きで寝る」「枕や寝具を工夫して気道を確保しやすい姿勢を保つ」ことはCPAP利用者でも質の良い睡眠に繋がります。
いびき対策として横向き寝は昔から推奨されており、簡単に実践できるので試してみる価値はあるでしょう。
以上、CPAP以外にも患者さんの状態に応じた治療法の選択肢はいくつか存在します。
ただし、睡眠時無呼吸症候群の重症度や原因によって適した治療法は異なります。
CPAPは依然として中等症~重症SASに対する第一選択(特に効果が高く保険適用で継続しやすい)なので、安易に代替療法に飛びつくのではなく、医師と十分に相談して決めることが大切です【2】。
例えば軽症SASであれば初めからマウスピースという選択もあり得ますし、肥満が強い方には減量プログラムが優先される場合もあります。
当院では、患者さん一人ひとりのSASのタイプやライフスタイルに合わせて最適な治療法を提案しています。
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よくある質問(FAQ)
CPAPは一生続けないといけないの?
A. 現在、CPAP療法は対症療法であり、使っている間は無呼吸を抑えられますが根本的に病気を治すものではありません。
そのため、基本的には睡眠時無呼吸の原因が解消されない限り治療を続ける必要があります。
多くの方にとっては「一生涯の治療」となり得ます【2】。
例えば、肥満が主な原因であれば大幅な減量でCPAPを中止できるケースもありますし、扁桃肥大が原因であれば手術で治る可能性もあります。
しかし、そうした根本治療ができない場合や効果が不十分な場合、CPAPを続けることが健康維持に不可欠です。
症状が安定していてもCPAPをやめてしまうと再発するリスクが高いため、主治医の判断なしに勝手に中止しないことが重要です。
将来的に新しい治療法が登場したり、患者さん自身の状態が変化すればCPAPから別の治療に切り替えられる可能性もありますので、定期検診で相談しながら治療方針を決めていきましょう。
体重が減ればCPAPをやめられる?
A. 体重を減らすことはSAS改善に非常に有効です。
特に肥満が原因で無呼吸が起きている方では、減量によって喉周りの脂肪が減少し、気道が広がって症状が軽くなります。
実際、約10%の体重減少で無呼吸指数(AHI)が20%以上改善したとの研究もあり【7】、ある程度以上の減量が成功すればCPAPなしでも眠れるようになる可能性があります【7】。
ただし、何kg減れば必ず不要になるという明確な基準はありません。個人差がありますし、もともとの重症度によっても違います。
例えば重症SASの方が少し痩せただけではまだCPAPが必要な場合も多いです。
一方、中等症の方が大幅減量で軽症レベルに改善した場合には、マウスピースへの変更や経過観察への移行が可能になることもあります。
減量はSAS治療の重要な柱ですので、ぜひ主治医や専門家の指導のもと取り組んでください。
その上でCPAP継続の是非は担当医と相談し、睡眠検査で無呼吸の改善を確認してから判断するようにしましょう。
無理なダイエットは禁物ですが、適切な減量はSASのみならず他の生活習慣病も改善するため、一石二鳥です。
マウスピースに切り替えても効果はある?
A. 軽症~中等症のSASであればマウスピース(口腔内装置)は有効な治療法です【6】。
CPAPほど無呼吸を完全には抑えられないものの、多くの患者さんでいびきや日中の眠気などの症状が改善します【6】。
実際、科学的な比較試験でも症状面においてはCPAPとマウスピースで大きな差がなかったという結果が報告されています【6】。
ただし、重症の方ではマウスピースだけでは無呼吸を十分に抑えきれないことが多いため効果が不十分です。
そのため重症SASではまずCPAPが推奨されます。
一方で「CPAPはどうしても無理だった」という中等症くらいの方には、マウスピースへの切り替えで症状が安定するケースも少なくありません。
マウスピース治療の鍵は適切なフィッティングと定期調整です。
歯科で作成後も噛み合わせや効果のチェックを受け、必要に応じて調整してもらうことが大切です。
上手く合えばCPAPに匹敵する満足度を得られる患者さんもいます。「CPAPは嫌だけどマウスピースなら毎晩使える」という方もいますので、適応があれば主治医に相談してみると良いでしょう。
CPAPをやめると寿命は縮む?
A. 睡眠時無呼吸症候群そのものが高血圧・心筋梗塞・脳卒中・糖尿病など様々な生活習慣病のリスク因子であり、放置すれば健康寿命を縮める可能性があることは確かです【2】。
実際、無呼吸を治療せず放置した人は治療した人に比べて長期的な心血管イベント(心臓発作や脳卒中など)の発生率や死亡率が高かったとの報告があります【4】。
一方で、CPAP治療を継続することでそれらのリスクをある程度抑制できる可能性が示唆されています【5】。
したがって、重症のSASを治療せずにいることは結果的に寿命を縮める方向に働きかねないと言えます。
CPAPを「やめる=無呼吸を再び放置する」ことになるため、特に心臓や脳血管への負担が大きくなり、将来的な大病や突然死のリスクを高めてしまうでしょう。
ただし寿命は個人差が大きく、他の健康要因も影響しますので、CPAPをやめたから必ず何歳短くなるというような単純なものではありません。
それでも統計的には未治療のSAS患者の方が有意に死亡率が高いことが分かっています【4】。
健康で長生きするためにも、適切な治療を続けることが望ましいでしょう。
医師に「やめたい」と相談してもいい?
A. もちろんです。遠慮せずに相談してください。
CPAPを処方された患者さんでも、「正直つらい」「できればやめたい」と感じることは珍しくありません。
医師としても患者さんが何に困っているのか知りたいと思っています。
「やめたい」と感じる理由を率直に伝えることが、次の解決策を見つける第一歩です。
例えば「マスクが合わず眠れない」「圧が苦しい」「効果が感じられない」など具体的な悩みを話してもらえれば、それぞれに対処法を提案できます。
前述したようなマスク変更や設定調整、他の治療への切り替えを検討することもあります。
相談したからといって頭ごなしに叱られたり無理強いされることはありませんので安心してください。
医師の目標も患者さんが無呼吸のリスクなく快適に生活できることです。そのために、CPAPにこだわらず一緒に最善の方法を考えてくれるはずです。
「やめたいなんて言ったら怒られるかも…」と我慢する必要は全くありません。
感じている不満や不安を伝えることで、治療の質を一緒に高めていきましょう。
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「いびきが酷いと言われた」「日中の眠気が強くて心配」「もしかして睡眠時無呼吸症候群かも…?」と感じたら、まずは専門医による評価を受けることをおすすめします。
森下駅前クリニックでは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診察・検査をオンライン診療で受けることが可能です。
来院の手間を省き、ご自宅からビデオ通話等で医師の問診を受けられます。
症状に応じて、自宅でできる簡易検査キットの手配や、必要に応じた精密検査のご案内もオンラインで行っています。
診断後、CPAP治療が必要となった場合も、当院ではオンラインでの継続フォローアップが可能です。
忙しくて通院が難しい方や、遠方にお住まいの方でも安心して治療を続けられる体制を整えています。
SASは放置すると様々なリスクがありますが、早期に適切な治療を始めれば日常生活の質は大きく向上します。
「SASかも?」と思ったら一人で悩まずに、ぜひ当院のオンライン診療をご活用ください。
専門医が丁寧にお話を伺い、あなたに最適な検査・治療プランをご提案いたします。眠りの質を改善し、健康な日々を取り戻すお手伝いをさせていただきます。
お問い合わせ・ご相談もお気軽にどうぞ。あなたの健やかな眠りを、私たちがサポートいたします。
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合併症
症状
原因
傾向
疑い
参考文献
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- 日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(SAS)診療ガイドライン2020. 南江堂, 2020年.
- Köhler M, Stoewhas AC, Ayers L, et al. Effects of CPAP therapy withdrawal in patients with OSA: a randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med. 2011;184(10):1192-1199.
- Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, Agusti AG. Long-term cardiovascular outcomes in men with OSA-hypopnea with or without treatment with CPAP. Lancet. 2005;365(9464):1046-1053.
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