睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる疾患です。
十分な睡眠時間をとっていても呼吸が何度も中断されるため睡眠の質が低下し、患者の多くに日中の強い眠気(過度の眠気)が生じます [1]。
日中の眠気は居眠り運転など重大な事故につながる可能性があり、SASを放置することは危険です。
本記事では、SASが引き起こす眠気のメカニズムと、それを放置することによるリスクについて、エビデンスに基づき解説します。
また、眠気を改善する治療法や、疑わしい症状がある場合の受診についても紹介します。
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?眠気との関係を解説
SASの病態生理(なぜ眠気を引き起こすのか)
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が狭くなって呼吸が何度も止まることで、体内に十分な酸素が取り込めなくなる疾患です。
特に閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)では、喉の筋肉や舌が緩むことで上気道が閉塞し、一時的に呼吸が停止(無呼吸)または低下(低呼吸)します [2]。
その結果、血中の酸素濃度が低下し、体は窒息を防ぐために繰り返し覚醒反応を起こします(浅い眠りへ移行し呼吸を再開させる) [2]。
一晩の睡眠中に何十回・何百回と起こるこうした断続的な低酸素状態と睡眠の分断(断片化)により、睡眠の質は著しく低下し、脳と身体が十分に休息できません [2]。
その結果、翌日の日中に強い眠気や疲労感が生じるのです。
さらに近年の研究では、SASで生じる慢性的な低酸素状態と睡眠断片化が脳の覚醒維持に関わる神経細胞に酸化ストレスなどのダメージを与えうることも示唆されています [1]。
これらの生理学的メカニズムも、SAS患者で過度の眠気(Excessive Daytime Sleepiness, EDS)が起こる一因と考えられています。
SASによる眠気の評価方法(ESSなど)
SASの患者でどの程度日中に眠気があるかを調べるために、Epworth眠気スケール(ESS)という質問票がよく用いられます。
ESSは日常生活の8つの場面について「どのくらい居眠りしやすいか」を0~3点で自己評価するもので、合計点で眠気の程度を数値化できます。
一般に合計スコアが10以上であれば日中の過度の眠気が示唆されます [1]。
ESSは簡便なチェック法として広く使われており、ご自身でインターネット等で調べて実施することも可能です。
結果が高得点だった場合は専門医に相談するとよいでしょう。
眠気が続くと危険?放置すると起こるリスク
SASによる睡眠中の低酸素や断片化された睡眠は、日中の眠気以外にも様々な健康被害をもたらします。
実際、未治療のSASは高血圧や心臓病、脳卒中、認知機能障害、交通事故など数多くの重大なリスク要因と関連することが報告されており、ガイドラインでも放置の危険性が指摘されています [3]。
代表的なリスクを以下に解説します。
交通事故・労働災害のリスク増加
日中の強い眠気は注意力や判断力の低下を招き、自動車の居眠り運転による事故リスクを高めます。
実際、ある研究では未治療SAS患者の自動車事故リスクは健常者の約2.5倍にも上ることが報告されています [4]。
しかし同じ研究で、持続陽圧呼吸(CPAP)による治療を継続している患者では事故発生率が健常者と同等レベルまで低下しており、適切な治療介入でリスクを軽減できることが示されています [4]。
同様に、日中の眠気が原因で重機操作中のミスなど労働災害につながる危険も指摘されています。
認知機能の低下と認知症リスク
SASを放置すると脳の認知機能にも悪影響があります。
慢性的な睡眠不足や低酸素状態により記憶力・集中力の低下が生じ、重症SAS患者では認知機能検査で明らかな障害が認められるケースも報告されています [5]。
さらに長期的には認知症を発症するリスクも高まる可能性が指摘されています。
実際、疫学研究においてSAS患者は同年齢の非SAS患者に比べて将来認知症を発症する割合が有意に高かったとの報告があります [5]。
こうした慢性的な低酸素や睡眠障害が脳の老化を加速させる可能性があります。
高血圧・心血管疾患の悪化
SASは循環器系の疾患リスクとも密接に関係します。
睡眠中に繰り返される低酸素状態や覚醒反応は交感神経を活性化し、血圧の恒常的な上昇(高血圧)を招きます。
実際、未治療SASの患者では高血圧の発症率が高く、また既に高血圧がある場合には治療抵抗性(薬が効きにくい)高血圧の原因となることがあります [3]。
さらにSASは心臓病(冠動脈疾患や心不全)や脳卒中のリスクとも関連しており [3][5]、長期間放置すると動脈硬化性疾患を進行させる要因となりえます。
夜間の無呼吸発作中に不整脈(例えば心房細動や徐脈/頻脈)が誘発されることもあり、SAS治療によって夜間の不整脈発生が減少するケースも報告されています。
うつ病・精神的健康への影響
SASによる慢性的な睡眠不足や酸素低下は精神面にも影響します。
SAS患者には抑うつ症状を呈する人が多いことが知られており(SAS患者のうつ病合併率は一般人口より高いとされます)、近年のメタ解析ではSASがある人は将来うつ病を発症するリスクがおよそ2倍に増加するとの報告もあります [6]。
実際にSAS患者では日中の倦怠感や意欲低下、イライラ感など精神的な不調を訴える場合も多く、症状が重いと仕事や対人関係にも支障を来すことがあります。
SASの適切な治療により睡眠の質が改善すると、こうした抑うつ症状が改善するケースも報告されています。
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)による眠気を改善する方法
幸い、SASによる眠気や合併症リスクは適切な治療によって大きく改善する可能性があります。
ここでは主な治療法とそのエビデンスを紹介します。
CPAP(持続陽圧呼吸療法)
中等症~重症のSASに対する第一選択の治療です。
就寝時に鼻や口に装着したマスクから気道に空気を送り込み、のどの気道閉塞を防止することで睡眠中の無呼吸・低呼吸をほぼ完全に抑制します。
CPAPによって睡眠の質が向上し、多くの患者で日中の強い眠気が劇的に改善すると報告されています [1]。
また、交通事故リスクや心血管リスクの低減効果も示されており [4][5]、SAS治療の中心的存在と言えます。
体重管理・生活習慣の改善
肥満はSASの重要な原因であり、減量により無呼吸指数(AHI)が大きく改善するデータがあります [7]。
BMIが高い場合は減量指導が優先されます。また、喫煙や寝酒(飲酒)は気道を狭め、無呼吸を悪化させるため控えることが推奨されます。
さらに、仰向けではなく横向き姿勢で寝るなど、睡眠姿勢の工夫も有効です。
マウスピース(口腔内装置)による治療
CPAPが使えない患者や中等症程度までのSASでは、マウスピース型の口腔内装置を就寝時に装着し、下顎を前方に固定して気道を確保する方法が用いられます [2]。
CPAPほどの強い効果はありませんが、眠気の改善例が多数報告されています。
ただし歯科での作製や調整が必要で、歯列や顎関節の状態によっては適応外の場合があります。
外科手術・その他
扁桃肥大、鼻中隔湾曲など解剖学的な問題が大きい場合や、重度肥満では外科的治療(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術・肥満外科手術など)が検討されることがあります [2]。
ただし長期的な効果にばらつきがあり、慎重に適応を見極める必要があります。
薬物療法としては、CPAP治療を行っても残る日中の過度の眠気に対して中枢神経刺激薬(モダフィニルなど)を使う場合がありますが、これはあくまで補助的手段です。
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こんな症状があれば要注意!早めの受診を推奨
SASは自覚しづらい場合もあるため、以下のような症状がみられるときは特に注意が必要です:
- いびきが大きい、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘される
- 日中に耐えがたい眠気がある(居眠り運転の経験など)
- 夜間頻尿がある、朝起きても熟睡感がない
- 集中力・記憶力の低下、倦怠感、気分の落ち込み
- 高血圧・心臓病・脳卒中を指摘されている
- 肥満体型で首まわりの脂肪が多い
該当する症状があれば、耳鼻咽喉科や呼吸器内科、睡眠科などで一度相談し、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)や簡易検査を受けることが推奨されます。
SASと診断されたら、早めに治療を始めることで合併症リスクを大きく低減できます。
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合はオンライン診療へ
「忙しくて病院に行く時間がない」「まずは手軽に相談したい」という方には、オンライン診療の利用もおすすめです。
森下駅前クリニックでは、SASの診察・検査に対応したオンライン診療を行っています。
自宅からスマートフォンやパソコンで専門医に相談でき、必要に応じて簡易睡眠検査機器を宅配で受け取って自宅で測定が可能です。
24時間予約を受け付けているため、隙間時間で受診しやすいメリットがあります。
SASは適切に治療すれば、眠気が改善し、事故や合併症のリスクを大幅に減らすことができる病気です。
長期間にわたって眠気が取れないと悩んでいる場合や、いびき・無呼吸の指摘がある方は、早めに専門医に相談し、必要な検査・治療を受けて快適な睡眠と日常生活を取り戻しましょう。
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参考文献
[1] Lal C, et al. Excessive Daytime Sleepiness in Obstructive Sleep Apnea: Mechanisms and Clinical Management. Ann Am Thorac Soc. 2021;18(5):757-768.
[2] Semelka M, et al. Diagnosis and Treatment of Obstructive Sleep Apnea in Adults. Am Fam Physician. 2016;94(5):355-360.
[3] British Columbia Ministry of Health. Obstructive Sleep Apnea (OSA): Assessment and Management in Adults – BC Guideline. 2020.
[4] Karimi M, et al. Sleep Apnea Related Risk of Motor Vehicle Accidents is Reduced by Continuous Positive Airway Pressure: Swedish Traffic Accident Registry Data. Sleep. 2015;38(3):341-349.
[5] Kales SN. Obstructive Sleep Apnea and Work Accidents: Time for Action. Sleep. 2016;39(6):1211-1213.
[6] Edwards C, et al. Obstructive sleep apnea and depression: A systematic review and meta-analysis. Maturitas. 2020;142:45-54.
[7] St-Onge MP, Tasali E. Weight loss is integral to OSA management: Ten-year follow-up in Sleep AHEAD. Am J Respir Crit Care Med. 2021;203(2):e7-e8.
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