毎晩のように大きないびきをかいていたり、日中に強い眠気や集中力の低下に悩まされていませんか?それは睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれません。SASになると眠っている間に何度も呼吸が止まり、そのたびに体内で酸素不足(低酸素状態)が起こります。

実はSASは決して珍しい病気ではなく、厚生労働省の調査では成人の約3人に1人が潜在的にSASを抱えている可能性があると報告されています。今回は、夜間の酸素濃度・血中酸素飽和度(SpO2)低下に焦点をあて、SASが引き起こすメカニズムとリスクについて、最新のエビデンスに基づき医師がわかりやすく解説します。

 

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)で血中酸素飽和度(SpO2)が低下するメカニズム

睡眠時無呼吸症候群(SAS)では、睡眠中に繰り返し「無呼吸」(10秒以上の呼吸停止)や「低呼吸」(呼吸が浅くなる状態)を起こします。呼吸が止まると肺に空気が入らず、血液中の酸素濃度(血中酸素飽和度; SpO2)が急激に低下します。通常、健康な人のSpO2は96~99%程度ですが、SASのある人では睡眠中にSpO2が90%以下に落ち込むことが頻繁に起こります。

酸素が不足すると体は危機を察知し、脳が覚醒(目が覚める状態)して呼吸を再開させます。しかし再び眠りに入るとまた無呼吸が発生し、「無呼吸→低酸素→覚醒→呼吸再開」というサイクルを一晩中繰り返してしまうのです。このメカニズムにより深い眠りが妨げられ、睡眠の質が著しく低下します。

さらに、血中の酸素不足そのものが体に大きな負担をかけます。酸素が下がると体は「もっと酸素を届けなくては」と反応し、心臓が通常より強く拍動して全身に血液を送ろうとします。この結果、心拍数や血圧の上昇を招きます。また低酸素状態では交感神経が緊張し、ストレスホルモンが分泌されるため、体は常に興奮状態となります。毎晩このような低酸素状態と覚醒反応を繰り返すことが、様々な不調や合併症の原因になるのです。

血中酸素飽和度(SpO2)の低下が体に与える危険な影響

睡眠中に血中酸素飽和度(SpO2)が低下することは、全身の臓器に危険な影響を及ぼします。酸素は生命維持に欠かせないため、酸素不足になると特に脳と心臓に大きな負担がかかります。SpO2低下の直接的な影響として、以下のような反応や症状が現れます。

強いストレス反応と睡眠の質の悪化

無呼吸による低酸素状態は体にとって大きなストレスです。重症のSAS患者では、一時的にSpO2が60~70%台まで低下するケースも報告されており、そのたびに体内では「酸欠による危機状態」として強いストレス反応が起きます。その結果、睡眠が何度も中断され、深い睡眠が得られず慢性的な睡眠不足に陥ります。夜間十分に休めないことで日中の強い眠気や倦怠感、集中力低下が生じ、仕事や学業のパフォーマンスにも悪影響を与えます。

血圧上昇と不整脈の誘発

低酸素状態では前述のように交感神経が活発化し、血管が収縮して血圧が急上昇します。繰り返し酸素が低下するSAS患者では夜間高血圧をきたしやすく、睡眠中も心臓に負担がかかります。その結果、心拍の乱れ(不整脈)が起こることもあります。実際、無呼吸に伴う低酸素血症は心臓の不整脈や狭心症発作、さらには夜間突然死の一因になることが報告されています。特に重症のSASでは睡眠中の徐脈や頻脈、心房細動などの不整脈リスクが高まるため注意が必要です。

脳への酸素不足によるリスク

睡眠中に繰り返す低酸素状態は脳への酸素供給も低下させます。これにより夜間の一過性脳虚血(脳への一時的な血流不足)を招いたり、朝起床時に頭痛を感じる原因にもなります。低酸素と頻回の覚醒により脳細胞が慢性的なストレスにさらされることで、集中力や記憶力の低下、気分の落ち込みなど精神神経症状につながる場合もあります。

このように、夜間の低酸素状態そのものが体にとって「危険信号」なのです。自覚症状がなくても、眠っている間に体は悲鳴を上げている可能性があります。放置すれば、やがて取り返しのつかない健康被害につながりかねません。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の長期的なリスク・合併症

睡眠時無呼吸症候群による夜間低酸素状態を放置すると、長期的に見て深刻な合併症や健康リスクが高まります。SASは単なる「いびき」や「眠気」の問題にとどまらず、全身の様々な臓器・機能に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。特にエビデンスが蓄積している主なリスク・合併症は以下のとおりです。

高血圧症と動脈硬化の促進

SAS患者では夜間の繰り返す低酸素と交感神経の過剰な興奮により、慢性的な高血圧が生じます。事実、SASは高血圧の独立した危険因子とされ、重症SAS患者の約半数に高血圧が認められるとの報告もあります。また酸素不足により血管の内皮機能が損なわれ、動脈硬化の進行が促されます。その結果、心筋梗塞や脳梗塞(心臓発作や脳卒中)といった致命的な心血管イベントのリスクが大幅に上昇します。実際に、SASは心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを高め、寿命を縮める可能性があることが複数の研究で示されています。

心血管疾患のリスク増大(不整脈・心不全など)

SASによる断続的な低酸素血症(間欠的低酸素)とそれに伴う全身の炎症反応は、長期的に見て心血管系に深刻なダメージを与えます。具体的には、心臓肥大や心不全、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)のリスク増大、心房細動などの不整脈の発症リスク上昇が報告されています。ある大規模研究では、重症のSASを治療せず放置した群は、治療を受けた群と比べて心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)による死亡率が有意に高かったことが示されています。つまり、SASを適切に治療しないと将来的に致命的な心臓・脳血管事故を起こす危険性が高まるのです。

2型糖尿病・メタボリックシンドローム

SASは代謝異常とも深く関わっています。睡眠不足と低酸素のストレスによりインスリンの働きが悪くなり、血糖値の上昇やコレステロール異常を招きます。その結果、糖尿病や脂質異常症など生活習慣病のリスクが高まります。実際、SAS患者は健常者に比べて2型糖尿病の有病率が高いことや、SASそのものが糖尿病発症の独立したリスク因子となる可能性が報告されています。SASとメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は相互に関連し合い、悪循環を形成します。

日中の眠気による事故・労働災害

SASを放置すると、慢性的な日中の強い眠気により交通事故や労働災害のリスクも高まります。居眠り運転による重大事故の背景にSASが潜んでいた例は少なくありません。厚生労働省もSASによる日中の眠気対策を重要視しており、トラックやバス運転手へのSAS検査の導入など予防策が進められています。自分では眠気を自覚していなくても、集中力や判断力の低下により事故を起こす危険性があるため注意が必要です。

その他の合併症

このほか、SASは腎機能の悪化や認知機能障害、うつ病などの精神疾患とも関連する可能性が指摘されています。夜間低酸素により腎臓の血流が低下し慢性腎臓病を進行させる懸念や、低酸素と睡眠分断による脳へのダメージがアルツハイマー型認知症のリスク因子になり得るとの報告もあります。またSAS患者はうつ症状を合併しやすいことが知られており、低酸素ストレスと睡眠障害が精神面にも影響を及ぼすと考えられています。こうした合併症についても研究が進められており、SAS治療による改善が期待されています。

以上のように、睡眠時無呼吸症候群をそのまま放置することは非常に危険です。中等症・重症のSASを適切に治療しない場合、心筋梗塞・脳卒中・生活習慣病・事故など致命的な結果を招き、死亡率が大幅に高くなることが報告されています。SASと診断されたら軽症であっても油断せず、医師の指導のもと速やかに治療を開始することが肝要です。

 

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断における血中酸素飽和度(SpO2)測定

SASが疑われる場合、診断の一環として夜間の血中酸素飽和度(SpO2)を測定することが重要です。SASの診断には本来、睡眠専門施設での一晩の検査(ポリソムノグラフィー: PSG)が最も正確ですが、まずは簡便なスクリーニング検査として自宅でのSpO2モニタリングが広く行われています。

具体的には、自宅で指先に装着するパルスオキシメーター(簡易な酸素飽和度計)を用いて、一晩中のSpO2変動と脈拍を記録します。この簡易検査では、眠っている間に何回酸素飽和度が一定以上低下したか(例えば3%以上低下した回数)を指数化した「酸素飽和度低下指数(ODI)」を算出し、無呼吸の程度を推定します。一般にODIが高い(低酸素になる回数が多い)ほどSASの重症度が高いことを示唆します。たとえば3%低下ODI(3% Oxygen Desaturation Index)が1時間あたり15以上であれば中等症以上のSASが疑われる、といった基準が用いられます。

一方、病院や睡眠クリニックで行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)でもSpO2測定は欠かせません。PSGでは脳波や呼吸気流、いびき、胸腹部の動きなどと併せて経皮的酸素飽和度(SpO2)の連続測定を行います。これにより、無呼吸や低呼吸が発生するたびにSpO2がどの程度低下するか、最低SpO2が何%まで落ち込むか、といった詳細な情報が得られます。特に最低SpO2値(nadir SpO2)はSASの重症度を評価する指標の一つです。重症SASでは最低SpO2がしばしば80%未満、時に70%台に達することもあります。診断報告書には、平均SpO2や最低SpO2、ODIなどが記載され、治療方針決定の参考にされます。

まとめると、SpO2の測定はSAS診断の重要なパラメータです。自宅での簡易検査では「酸素低下の頻度」をチェックし、精密検査では「どのくらい低下しているか」まで正確に評価します。息が止まっていないかは家族でも観察できますが、酸素飽和度の低下は機器で測らないとわからないため、SASが疑われる場合はぜひ医療機関に相談して適切な検査を受けましょう。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)のCPAP治療による血中酸素飽和度(SpO2)の改善

SASと診断された場合、最も有効な治療法はCPAP(持続陽圧呼吸)療法です。CPAP装置を用いて睡眠中に鼻や口に空気を送り込み、気道に空気圧をかけることで上気道の閉塞(喉のつまり)を防ぎ、無呼吸を起こさせないようにします。CPAP療法を適切に継続することで、睡眠中のSpO2低下は劇的に改善します。実際、CPAP治療により一晩の平均SpO2や最低SpO2が治療前と比べて大きく改善することが報告されています。つまり、CPAPを使えば夜間の酸素不足状態が解消され、血中の酸素が安定して保たれるようになるのです。

CPAPによって酸素飽和度が改善することは、前述した様々な合併症リスクを下げる上でも極めて重要です。酸素低下がなくなることで夜間の血圧上昇や不整脈のリスクが軽減し、心臓への負担が減ります。また断続的低酸素が解消することで全身の炎症反応も和らぎ、長期的には高血圧や動脈硬化の進行抑制にもつながると期待されています。実際、重症SAS患者を10年以上追跡した研究では、CPAP治療を受けたグループは未治療のグループに比べ、心筋梗塞や脳卒中など致命的な心血管イベントの発生率が有意に低かったとの結果が報告されています。このことからも、CPAPで夜間低酸素状態を是正することが将来的な重篤疾患の予防につながると考えられます。

さらに、CPAP治療を行うと睡眠の質が飛躍的に向上し、日中の眠気や倦怠感も大幅に改善します。多くの患者さんが「朝すっきり目覚められる」「日中眠くなくなった」と効果を実感しています。これらの自覚症状の改善も、低酸素状態が解消され脳や体が十分休息できるようになったおかげです。CPAPはSAS治療のゴールドスタンダード(標準治療)であり、中等症以上の患者さんには原則としてCPAPが第一選択となります。

CPAPマスクの装着には慣れが必要ですが、最近の機器は小型静音化が進み快適性も向上しています。当院でもCPAP療法の導入支援・使い方のフォローを行っていますので、機器の扱いに不安がある方も安心して治療を継続できます。SASによる夜間低酸素は適切な治療で必ず改善できますので、あきらめずに取り組みましょう。

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SASは適切に治療すれば、眠気が改善し、事故や合併症のリスクを大幅に減らすことができる病気です。

長期間にわたって眠気が取れないと悩んでいる場合や、いびき・無呼吸の指摘がある方は、早めに専門医に相談し、必要な検査・治療を受けて快適な睡眠と日常生活を取り戻しましょう。

 

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参考文献:

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット: 「睡眠時無呼吸症候群/SAS」
[2] 森下駅前クリニック・オンライン診療のご案内
[3] 大井町みんなのクリニック: 睡眠時無呼吸症候群における酸素飽和度低下について
[4] 日本呼吸器学会 編著『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』南江堂, 2020年
[5] Johns Hopkins Medicine: “The Dangers of Uncontrolled Sleep Apnea”
[6] Gabryelska A, Łukasik ZM, Makowska JS, Białasiewicz P. “Obstructive Sleep Apnea: From Intermittent Hypoxia to Cardiovascular Complications via Blood Platelets.” Front Neurol. 2018;9:635
[7] Marin JM, et al. “Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with CPAP: an observational study.” Lancet. 2005;365(9464):1046-53
[8] 一般財団法人 運輸・交通SAS対策支援センター: 「睡眠時無呼吸症候群の検査方法」
[9] 呼吸器・睡眠時無呼吸症候群 睡眠医療情報: 酸素飽和度低下指数(ODI)について

 

睡眠時無呼吸症候群をもっと詳しく

睡眠時無呼吸症候群(SAS)について、さらに詳しく知りたい方は各記事をご確認ください。

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