中高年の方で「最近物忘れがひどくなった」と感じている方はいませんか?加齢のせいと諦めてしまいがちですが、実は睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因で記憶力や認知機能が低下している可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう病気です。特に中高年に多く、高齢者では最も多い睡眠障害とも言われるほど頻度が高い疾患です。SASになると大きないびきや日中の強い眠気といった症状で知られていますが、それだけではありません。最近の研究から、SASが物忘れや認知症リスクの上昇など「脳へのダメージ」を引き起こすことが分かってきました。

本記事では、睡眠時無呼吸症候群と物忘れ・認知機能低下との関連性、そして症状・原因・治療について医学的根拠に基づき分かりやすく解説します。最後には当院(森下駅前クリニック)で行っているオンライン診療についてもご紹介します。

 

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)と物忘れ・認知機能低下の関連性

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と記憶障害や認知症には深い関連があります。SASになると慢性的な睡眠不足や夜間低酸素状態に陥り、それが認知機能の低下(物忘れ、注意力低下、実行機能障害など)を招くことが多くの研究で報告されています。

実際、ある大規模調査ではSAS患者の約半数に軽度認知機能障害(MCI)が認められ、中等度~重症のSASではその割合が55%を超えていたと報告されています。さらに別の研究では、軽度認知障害の患者の約4人に1人がSASを合併していたとの結果もあります。これらの事実は、睡眠時無呼吸症候群が認知機能低下の重要な一因であることを示唆しています。

加えて、SASと認知症(特にアルツハイマー型認知症)との関連も注目されています。SAS患者は将来的に認知症を発症するリスクが有意に高いことが報告されており、ある解析ではSAS患者の認知症発症リスクは持たない人の1.4倍に達するとの結果でした。中でもアルツハイマー型認知症の発症リスクは約1.3倍に上昇していたことが報告されています。

こうしたことから、睡眠時無呼吸症候群は認知症(アルツハイマー病など)を招く危険因子の一つと考えられています。また、高齢者のSASでは物忘れや認知機能低下といった症状がより顕著に現れやすいとも指摘されています。年齢を重ねるにつれSASによる脳への影響が大きくなり、加齢による認知機能予備力の低下と相まって症状として表れやすくなる可能性があります。

以上のように、睡眠時無呼吸症候群は単なるいびきや眠気の問題に留まらず、放置すると認知症を含む脳の健康に深刻な影響を及ぼしうる病気なのです。

なぜ睡眠時無呼吸症候群(SAS)で物忘れが起きるのか?

SASによって物忘れや認知機能低下が起こるのには、いくつかの医学的な理由があります。主な原因は、夜間の低酸素状態と睡眠の分断です。

SAS患者では睡眠中に上気道が塞がり呼吸が停止するため、血中の酸素濃度が何度も低下し、そのたびに脳が目覚めてしまいます。一晩中このような断続的な酸素不足と睡眠の分断が繰り返されることで、脳の神経細胞に大きなストレスとダメージが蓄積します。特に記憶を司る海馬や前頭前野などは酸素不足に弱く、SAS患者ではこれらの部位の萎縮や機能低下が報告されています。

実際、SASは脳の微小な血流障害や虚血性損傷を引き起こし、注意力、実行機能、作業記憶、長期記憶など幅広い認知領域に影響を及ぼすことが分かっています。こうした脳への直接的ダメージが物忘れや思考力低下として現れるのです。

さらに、SASが物忘れを引き起こすもう一つのメカニズムとして脳内老廃物の蓄積が考えられています。私たちの脳は睡眠中に老廃物(例えばアルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβなど)を排出し整理する働きがあります。しかしSASで睡眠が浅く分断されると、この「脳のゴミ掃除」機能が妨げられ、アミロイドβが脳内に蓄積しやすくなる可能性が指摘されています。

実際、近年の研究で重症のSAS患者ほど脳脊髄液中のアミロイドβ濃度が低下(=脳内に沈着していることを示唆)する関連が報告されました。アミロイドβの蓄積はアルツハイマー型認知症の病変であり、SASはこうした神経変性のプロセスを加速させる誘因となりうるのです。

また、SASは睡眠中の低酸素や再酸素化ストレスによって活性酸素の産生や慢性的な炎症反応を引き起こします。この酸化ストレスや慢性炎症も血管や神経を傷つけ、脳の認知機能を低下させる一因と考えられます。

加えて、SAS患者では高血圧や動脈硬化が促進されることが知られており、その結果として脳卒中や脳の微小血管障害が起これば記憶障害を含む認知障害が一層進行してしまいます。実際、重症SASの方は脳卒中発症リスクが有意に高いとの報告もあり、こうした脳血管障害(いわゆる血管性認知症の原因)のリスク増加もSASが物忘れを招く間接的なメカニズムと言えるでしょう。

このように、睡眠時無呼吸症候群で物忘れが起きる背景には、夜間低酸素と睡眠断片化による脳細胞へのダメージ老廃物(アミロイドβ)の蓄積酸化ストレス・炎症の影響、そして脳血管障害の誘発といった複合的な要因が存在します。特に高齢者ではこれらの悪影響に対する脳の抵抗力が低下しているため、SASによる認知機能低下がより顕著に現れやすいのです。「高齢者 無呼吸 なぜ」と感じる方もいるかもしれませんが、以上がその医学的な理由になります。

物忘れ以外に注意すべき睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサイン

睡眠時無呼吸症候群は物忘れ以外にも様々なサインを呈します。以下のような症状が見られる場合は、SASを疑って注意する必要があります。

  • 大きないびき:家族や同室者から睡眠中の激しいいびきを指摘される。いびきはSASの代表的な症状です。
  • 睡眠中の無呼吸やあえぎ寝ている間に呼吸が止まる、あるいは「息が詰まってハッと目が覚める」ような出来事が頻繁に起こる。これは典型的なSASのエピソードです。
  • 頻繁な覚醒と熟睡感の欠如夜中に何度も目が覚める(トイレに起きる回数が増える場合も)。朝起きたときに熟睡した感じがしない、疲労感が残る。起床時に頭痛や喉の渇きを感じることもあります。
  • 日中の強い眠気:日中に耐え難い眠気に襲われたり、会議中や車の運転中につい居眠りしてしまう。集中力が続かず、ぼんやりする時間が増えるのも特徴です。
  • 気分の変調・認知面の変化イライラしやすくなったり抑うつ気分になる、物忘れが増えて判断力や注意力が落ちたと感じる。SASでは睡眠不足の影響で精神面・認知面の症状が現れることがあります。

以上のような症状はSASでよく見られるサインです。特にいびきが大きい呼吸停止を伴う場合は要注意です。ご自身では気付きにくい症状もあるため、家族から指摘された場合は真剣に受け止めましょう。物忘れだけでなくこれらのサインに心当たりがある場合、放置せず医療機関での検査を検討することが大切です。

 

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療で物忘れは改善する?

結論から言えば、適切に睡眠時無呼吸症候群を治療すれば物忘れや認知機能低下の改善が期待できます。SASの標準的な治療法であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)では、就寝時に鼻マスクから気道に空気を送り込み、喉の閉塞を防ぐことで無呼吸をなくします。

CPAPにより夜間の低酸素状態と睡眠の分断が解消されると、脳は十分な休息と酸素供給を得られるようになり、その結果日中の眠気や注意力の低下が改善し、記憶力を含む認知機能も多くの場合向上します。実際、複数の臨床研究のレビューによれば、CPAP治療によってSAS患者の認知機能(特に言語記憶・視空間認知・作業記憶など)が有意に改善したと報告されています。

また、SAS患者は治療を続けることで将来的な認知機能低下や認知症発症リスクを減らせる可能性も示されています。例えば、ある研究ではSAS患者でCPAP治療を真面目に継続したグループは、未治療のグループに比べて数年後の軽度認知障害(MCI)への進行が遅れたとの報告があります。さらに興味深いことに、既に認知症と診断された患者さんでも、同時にSASを治療したところ認知機能が改善したケースも報告されています。

このように、睡眠時無呼吸症候群の治療介入は物忘れや認知機能低下に対して一定の改善効果が期待できるのです。

もっとも、SAS治療によって全ての患者さんの認知症状が劇的に治るというわけではありません。認知機能の改善度合いは個人差があり、年齢や認知障害の程度、他の疾患の有無などによって異なります。しかし少なくとも、治療によって症状の進行を食い止めたり、日常生活に支障を来すレベルの物忘れが軽減したりする可能性は十分にあります。実際にCPAPを使用した患者さんからは「朝の頭の冴え方が違う」「集中力が戻ってきた」といった声が聞かれます。

根本的な原因である無呼吸を取り除くことで、脳へのダメージを減らし回復を促せると考えられます。物忘れでお悩みの方は、SASを治療することで状況が改善する余地があることをぜひ知っておいてください。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を検討すべきタイミング

では、どのようなタイミングで睡眠時無呼吸症候群の治療を検討すべきでしょうか。基本的には「SASが疑われた時点」および「SASと診断された時点」です。症状が出ているならなるべく早く対策を始めることが重要です。具体的には、次のような場合は治療を検討しましょう。

  • 上述のようなSASの兆候(いびき、無呼吸、日中の眠気、物忘れ等)が頻繁に見られる場合。特に日常生活に支障をきたしているなら放置すべきではありません。
  • ご家族に睡眠中の無呼吸を指摘された場合。自覚がなくとも他者から無呼吸を目撃されたら重症の可能性があります。早急に医療機関で評価を受けましょう。
  • 中等度以上のSASと診断された場合。睡眠検査で無呼吸低呼吸指数(AHI)が高かった場合、症状の有無に関わらず治療を開始することが推奨されます。重症SASは放置すると高血圧や心臓病、脳卒中のリスクも大幅に上がるためです。
  • 物忘れなど認知機能低下が進行している場合。年のせいと決めつけず、SASが隠れていないか検査し、該当すれば治療を始める価値があります。SASを治療することで将来の認知症発症を予防できる可能性もあるためです。特に高齢のSAS患者では「今さら治療しても…」と考えず積極的に治療を行うことが推奨されています。

以上のような状況に当てはまる場合は、速やかに医師へ相談し治療方針を検討するタイミングと言えます。睡眠時無呼吸症候群は放っておいても自然に治ることはまれで、むしろ時間とともに合併症リスクが蓄積していきます。早期に対応を始めることで、将来の脳や心臓へのダメージを未然に防ぎ、生活の質の低下を防ぐことができます。特に物忘れ等の症状が出ている方は、「歳のせい」と片付けず一度SASの可能性を調べてみることをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合はオンライン診療へ

「忙しくて病院に行く時間がない」「まずは手軽に相談したい」という方には、オンライン診療の利用もおすすめです。

 

森下駅前クリニックでは、SASの診察・検査に対応したオンライン診療を行っています。

自宅からスマートフォンやパソコンで専門医に相談でき、必要に応じて簡易睡眠検査機器を宅配で受け取って自宅で測定が可能です。

24時間予約を受け付けているため、隙間時間で受診しやすいメリットがあります。

 

SASは適切に治療すれば、眠気が改善し、事故や合併症のリスクを大幅に減らすことができる病気です。

長期間にわたって眠気が取れないと悩んでいる場合や、いびき・無呼吸の指摘がある方は、早めに専門医に相談し、必要な検査・治療を受けて快適な睡眠と日常生活を取り戻しましょう。

 

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参考文献一覧(References)

  1. Montalvão Neves J, Maciel CA, Alexandre-Sousa P. Benefits of Treating Obstructive Sleep Apnea in Cognition: Systematic Literature Review. J. Dement. Alzheimer’s Dis. 2025; 2(1):3. DOI: 10.3390/jdad2010003
  2. Beaudin AE et al. Cognitive Function in a Sleep Clinic Cohort of Patients with Obstructive Sleep Apnea. Ann Am Thorac Soc. 2021; 18(5): 865-875. DOI: 10.1513/AnnalsATS.202004-313OC
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  8. 千田 一嘉. 「睡眠時無呼吸症候群と認知症」長寿医療センター病院レター 第81号, 2019年7月22日.

 

睡眠時無呼吸症候群をもっと詳しく

睡眠時無呼吸症候群(SAS)について、さらに詳しく知りたい方は各記事をご確認ください。

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